取材ノート

「スパイ行為」


 「2月に釈放された例の杉島氏、川口外相と会った際に『生きて帰ってこれてよかった』と報告していた話、知っていますか。スパイ行為を働いておきながら、よくもあんなことがいえたものですね」「それよりも、外相ともあろう者が、なぜ迷惑をかけた人間と会うんですかね。まったく理解に苦しむ」。月例会合での会話である。

 「杉島氏」とは、99年12月に「法律に抵触するスパイ行為を行い、該当機関に抑留された」(朝鮮中央通信)元日本経済新聞社員のことである。

 「朝鮮の党、国家、軍隊の機密に関わる問題、朝米、朝・日関係をはじめとする朝鮮の対外政策に関する内部資料を収集」「(本人は)日本と南朝鮮の専門機関から任務を受け、資金まで提供されながら、スパイ行為を行ったと自白した」(朝鮮中央通信)

 日本に帰国後、共同通信の取材を受けた際も、「過去4回の訪朝後、内閣情報調査室と公安調査庁から求められ、見聞したことを話した。北朝鮮側がスパイ行為として調べたのはやむを得ない」と語っている。その見返りに、「謝礼を受け取っていた」という話もある。

 スパイ行為を働いていたことを本人が認めているのだから、日本当局・外務省からそのことについての言及があってしかるべきなのだが、今に至るも一言もない。そればかりか、外相ともあろうものが「スパイ行為」をしていた人間の労をねぎらい(?)談笑するとは言語道断である。見方によっては、「スパイ行為を奨励しているととられかねない」とは、前述の会合出席者の言葉だ。

 相手が朝鮮だから、こうしたことが公然とまかり通るのか。

 「杉島氏」は週刊誌などにも登場して、「抑留の日々」について語っているが、その前に「スパイ行為」に及んだ経緯について明らかにするべきだ。(正)

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