1世に安らかな老後を
各地の同胞生活相談センター
介護サービスの取り組み
「同胞高齢者に安らかな老後を」と、同胞の生活を支える活動の一環として介護サービスを始める同胞生活相談綜合センターが増えている。介護事業は以前は行政の措置制度だったが、介護保険制度の発足によって民間業者にも参入の道が開かれた。NPO(民間非営利組織)法人の取得、自治体の各種制度活用、日本の民間業者や同胞業者とのタイアップなど、取り組み方はさまざまだ。同胞高齢者が集う「マダン」を開設し、介護サービス事業者として認定されるよう、行政と交渉を続けるセンターも少なくない。介護事業に取り組む各地の実践をまとめた。
NPO取得、独自にヘルパー講座 5月に介護支援事業所に昇格(京都・エルファ)
NPO法人 京都コリアン生活センター「エルファ」は99年11月、居宅事業サービス事業所を設立。訪問介護から始め、昨年3月には京都市南区に通所介護事業(デイサービス)施設をオープンした。 登録ヘルパーは1級取得者を含め45人。今年3月に職員がケア・マネージャー資格を取得したことから、5月にはケアプランを作成できる居宅介護支援事業所に昇格する。 98年から同胞ヘルパーの育成、00年から同胞高齢者向けの「ウリ式デイサービス」の開発に取り組んできた。昨年9月には同胞専門家を講師に迎え、独自のヘルパー2級講座を開講。この6月から2回目の講座を始める。 都道府県レベルのセンターとしては初のNPO資格を取得し、1世の聞き取りや同胞障害者を講師に迎えた手話講座にも取り組んでいる。 京都コリアン生活センター エルファ 月〜土 9〜17時 TEL 075・693・2550 府、市の支援制度活用 事務所を開放、憩いの場に(大阪・吹田、泉州北、八尾柏原)
総聯大阪・吹田支部は、吹田市が実施している「街かどデイハウス支援事業」の助成制度を利用して事務所を改装、昨年4月に「吹田トンポマウル」をオープンした。ハラボジ、ハルモニたちの憩いの場として好評だ。 改装費の一部は大阪府と吹田市から助成され、利用者一人に対して1時間約500円が支給されるようになった。 利用者は実数で26人。本来、市の制度に適用されるのは介護認定で自立と判定された高齢者だけだが、交渉の結果、要介護者も対象となった。同胞高齢者が日本の施設を利用しても、食事などの生活習慣の違う日本人とはなじめないことを考慮してのことだ。 大阪ではほかにも泉州北同胞生活相談綜合センター、八尾・柏原センターが大阪府と各市の制度を利用して、それぞれの事務所を解放し、同胞高齢者を対象にしたデイハウス事業を行っている。(対象は介護認定を受けていない同胞のみ) 総聯吹田支部 月・火・木・金 10時〜16時 TEL 06・6337・8488 泉州北センター 月〜金 10〜16時 TEL 0725・41・2352 八尾・柏原センター 月〜金 10〜16時 TEL 0729・91・6678 日本人業者とタイアップ 朝・日交流の「財産」生かす(山口・下関)
下関センターは、介護事業において県内で経営成績がトップの豊関介護サービス株式会社の協力を得て、昨年秋から同胞高齢者の介護サービスを進めている。 同社の代表を務める頴原俊一氏は下関朝鮮初中級学校校医を40年間勤めた医師。以前から同胞高齢者への関心が高く、25年間下関初中教員を勤めたセンター職員の韓朝男さんに協力を約束し、社員に採用した。 韓さんをはじめ同胞ヘルパーは7人で、会社では同胞高齢者の介護事業を任されている。1世が多く住む大坪を中心に介護サービスの申請を代行したり、ヘルパーの紹介を積極的に進めた結果、32人の同胞高齢者が同社の介護サービスを利用するまでになった。 豊関介護サービス株式会社は、在日朝鮮人ヘルパーの育成が急務との観点からヘルパー養成講座の50人の定員のうち、10人程度の 「在日枠」を設け、授業料も半額免除している。 下関センター 9〜17時 TEL 0832・32・4039 同胞業者と事業所設立 日本人医師招き健康講座も(広島西・さむけあ・ありらん)
広島・西センターは4月、市内で訪問介護サービス会社を運営する同胞女性とタイアップし、指定通所介護事業所「デイサービスセンター さむけあ・ありらん」を設立。センターの1階を開放し、要介護認定を受けた15人の同胞高齢者に介護サービスを行っている。ヘルパー2級取得者をはじめ職員は6人だ。 西センターは、高齢者介護を進めるにあたって近隣にある生協病院の協力を得た。同病院の組合員になり、病院の医師や看護婦たちを講師に招いて同胞高齢者向けの健康講座を月1回、定例化。また、広島市が進める「生きがい活動支援通所事業」の認可も受け、毎週土曜日に60歳以上の高齢者たちを対象にしたカルチャー活動も行っている。 さむけあ・ありらん 月〜金 9時半〜15時半。TEL 082・234・9223 長寿会のネットワーク生かす 無年金者支援、サークルも(川崎・フレンド高麗)
フレンド高麗は、00年8月に川崎市内の同胞高齢者の親ぼく団体である川崎高麗長寿会が設立した訪問介護サービス事業所だ。登録ヘルパーは3人。市の基準該当居宅サービス事業者の認定を受けた。この制度は地域の実態に即したきめ細かいサービスの提供を目指したもので、事業範囲が市内に限られる。 介護事業参入にあたって長寿会が力を入れたのは、同胞高齢者のネットワーク作りと行政との交渉だった。無年金状態に置かれた同胞高齢者は、介護保険料や介護サービスの利用料を工面することが難しい。そこで彼らに特別な措置を講じるよう市に要望を重ね、昨年10月、市が外国人無年金高齢者に支給する福祉金の増額を実現。また、老人福祉団体の認可も獲得し、助成金の支給も受けている。 現在、長寿会の会員は140人で団体の枠を越えた同胞高齢者が親ぼくを深めている。豊かな老後の一助に、と健康促進のためのリズム体操、社交ダンスを学ぶサークル団体「ヘルプ高麗」も設立した。数年内にデイサービス施設を開設することも検討している。 フレンド高麗 毎週月〜土 9〜17時 TEL 044・322・7280 |