取材ノート

介護事業にもっと力を


 介護の現場は、たくさんのことを見せてくれる。

 ひとつは世代を越えた交流だ。高齢者介護を担うホームヘルパーは40、50代の同胞女性が多いが、最近は20、30代も増えている。1世の話を聞く、傾聴ボランティアを申し出る同胞青年も出てきていると聞く。

 1世の減少、核家族化によって同胞社会でも世代が断絶された感はあるが、介護の現場を直接、体験した3、4世たちは、異国で差別を生き抜いた「人生の先輩」から生きる意味を学んでいる。

 介護の現場では「1世に安らかな老後を」、と主義主張、団体を越えた同胞同士の協力の輪も広がっている。

 介護事業は、同胞社会を豊かにする要素を持っている。

 言うまでもなく、歴史的背景や生活習慣が違う同胞高齢者には独自のサービスが必要だ。母語ではない日本語を忘れ、ウリマルでしか会話ができなかったり、日本の施設に行っても民族差別を受けるケースは枚挙にいとまがない。

 現在、各地の同胞生活相談綜合センターが同胞高齢者を対象にしたデイサービス、同胞ヘルパーによる訪問介護に取り組んでいるが、その数はあまりにも少ない。

 同胞高齢者のニーズはまだまだ「潜在」している。

 介護保険制度は、社会全体の力で高齢者介護を支えようと生まれた。民間業者に介護事業の参入の道を広げたのは、一人ひとりの高齢者にきめ細かいサービスを施すためだ。しかし、担う人材がいて、初めてサービスは生まれる。

 日本各地にいる65歳以上の同胞高齢者は約7万5000人。

 同胞社会にも日本社会同様、高齢者介護の負担を家族や女性に強いる厳しい現実がある。

 地域の実情に沿った実践、彼らの負担を軽減していくための、さまざまな取り組みが期待されている。(慧)

日本語版TOPページ