オンマ、アッパも一緒に!

東京第3初級・ウリマル教育


 ユニークなウリマル(朝鮮語)教育に取り組んでいる東京朝鮮第3初級学校(東京・板橋区)。同校では現在、保護者たちにも協力してもらい、児童たちの話し言葉(マラギ)のスキルアップに力を入れている。同校は2年前から保護者を対象にしたウリマル教室を開催してきたが、その成果が実り、3月の公開授業では初の「2学年家族ウリマル発表」が開かれた。買い物、寝坊、ゲーム遊び…、家庭の日常が生き生きとウリマルで表現された。

「オーニャ」

 「イロナラ アチミダ(起きなさい。朝よ)」

 「ナモジ オーブンマン キダリョ ヂュセヨ(あと5分だけ待って)」

大盛況だった家族ウリマル発表

 寝起きが悪い息子を起こし続けるオモニ。布団からなかなか出てこない息子にしびれを切らし、ドスのきいた声でもう1度。「イロナラー(起きなさい!)」。飛び起きる息子に「オモニ コハムソリ チャム チョッチ?(オモニの叫び声、いいでしょ?)」と冗談を飛ばすと、会場はどっと沸いた。

 同校が初めて開催した「家族ウリマル発表」の会場となった教室では、初級部2年の児童ら全員がオモニ、アボジたちとともにウリマルで創作した「作品」を披露した。

 しょうゆが切れたことに気づき、娘に買い物を頼むオモニ。「1人で行ける?」と心配するオモニに、「もう3年生になるから大丈夫」と胸を張る娘。「オーニャ。サルピョガゴラ(気をつけて行っておいで)」と味のあるウリマルで見送る。

 タコのかぶりものをして、海の生きものがサッカーをする様子を発表したユニークな親子や一家総出の家族など、初の家族ウリマル発表は大盛況だった。

ウリマル教室も

 この日の集いを開くにあたって同校は、昨年4月から初級部2年の保護者を対象にしたウリマル教室を開催してきた。「お帰り」「何してるの?」「どうして?」「ちょっと貸して」などオモニ、アボジたちが普段、子どもたちに話しかける言葉を選び、ウリマルの独特な言い回しや簡単な会話を練習してきた。

 練習に入る前にまず、講師が日本語とウリマルの違いについて解説。ウリマルは日本語に比べて上下関係がはっきりしていること、日本語との表現の違いは物の感じ方、とらえ方の違いにあると説明した。

 参加者はオモニが多数を占めたが、ウリマルへの関心は相当なものだったという。担当した高幸秀教員は、「6.15北南共同宣言の発表、そして南出身の同胞との交流が増えるなか、同胞社会でウリマルの必要性が再認識されていることを肌で感じた」と話す。

言語環境変える

 同校の試みはオモニ、アボジにウリマルを学んでもらうことによって、子どもたちが「ウリマルを使える言語環境」を広げていこうという点に狙いがある。1世のウリマルが飛び交ったトンネが減少するなか、子どもたちがウリマルを学ぶ「場」は、学校に限られるからだ。

 保護者とタイアップしてウリマル教育を進める同校のような取り組みは各地で行われているが、朝鮮学校ではこれを一般化するため、来年度改編(10年ぶり)の教科書に「保護者の協力」を視野に置いた内容を新たに含める。

 例えば、初級部1年の教科書は入学初期から「話す」力を育むことに重点を置き、「名前はなに?」「アンニョンハセヨ」「ここはどこ?」など、実践的な会話がたくさん登場する。

 また、教科書には、子どもが学校でどんな言葉を学んでくるか、保護者が一目でわかるよう、「自分の名前と年を答える言葉を学びます」「トンム(友達)と交わすあいさつを学びます」など保護者向けの説明が各課ごとに記される。家庭で使ってほしい単語は教員の参考書にまとめられ、担任を通じて保護者に伝えられる。(張慧純記者)

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