愛情とアボジ
深い夜
末息子のサッカー靴のひもを結びながら
俺は考える
終りのない様だった青春期もとうに過ぎ去り
息子たちの喜びが自分の喜びとなった
ああ、いつの間に俺もいい年になったもんだ
俺が育てられたそのままに
誉めるのは少なめに 教訓は多めに与えてきた
強く叱りつけたあとは一人座り
かえって残された胸のしこりに
額のしわをまたひとつ増やすこのごろ
流れ行く時代があまりに険しく
放っておいたら他人になってしまいそうで
いじくり回したら他の夢を追いかけていってしまいそうで
まだまだ育てる楽しみよりも
心配ばかりが多いものだ
息子を前にひとしきり説教をしながらも
気がつくとそれはすべて俺の幼い頃に
俺のアボジが言っていた言葉
幼かった自分を思い出し
長男の生意気な言葉に
かつての俺の姿を重ねながら
叱りつづけるのがアボジの仕事
愛情
柔らかな乳の愛情を生まれて真っ先に知るものだが
人生のはるかなる道を歩みながら
初めて知る奥深いものもある
だから俺は考える
この世にオモニの愛を歌った歌は数知れず
優しいといえば口をそろえてオモニというけれど
溢れ出すオモニの愛情よりも
厳しい眼差しを向け続ける
アボジの愛情が真に熱いのだと
静かな寝息 胸の奥で聴きながら
末息子のサッカー靴を枕もとにおき
俺のアボジが奥深くしまってきたその愛情を
あらためて心に受けとめる
ああ、アボジ 今日もこの俺を
ただ黙ってあの眼差しで見ているのだろう
俺は今でも
アボジの前では幼い息子
祖国の前でも不肖の息子
でも考えれば考えるほどこう呼んでみたい
私の祖国をアボジと
党の愛をアボジと
ソ・ヂョンイン 総聯結成45周年記念文学作品集「風浪を超えて」収録(訳・全佳姫) |