医療−最前線

安全な食品への知識


 ここに40年前の一冊の本がある。米国の生物学者のレイチェル・カーソンが、「沈黙の春」という本を書いて、作物に対する化学薬品の使用がいかに危険かを訴えた。本は世界的な反響を呼ぶ一方、彼女は農薬業界からの敵意と攻撃にさらされた。著者が女性ということもあって、卑劣な個人的な中傷も多かった。

 今も同様なことが起きている。有機農業を阻止しようとする動きがそれだ。消費者が安全な食品を求めようとする動きを、多国籍企業が、「変わり者のやることだ」とレッテルを張っている。

 しかし、この流れには逆らえない。英国はじめ欧州各国では、地元で消費する食べ物はできるだけ地元で生産しようという動きが広まっている。ベルギー、ドイツなどでは、政府が有機農業に対する補助金を大幅に増やした。国民の圧力も強まってきているのだ。

 BSEに続き、家畜や農作物をめぐる化学薬品やバイオの恐怖もある。ジャガイモの栽培が盛んな英国のリンカーンシャーでは乳がんの発生率が異常に高い。リンデン(殺虫剤の一種)の使用との関連が疑われながらも完全に証明されていない。また、米国で報告されているガンの症例は、遺伝子組み換え牛成長ホルモンを注射された牛の乳と無関係なのかどうか。米食品医薬品局は安全だとしているが、カナダの科学者による実験ではラットの甲状腺や前立腺に反応が現れている。ほかにも、成長促進剤として家畜に与えられる抗生物質の問題…。

 食品に対する意識を高めることが今、強く求められている。(李秀一・医療従事者)

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