ざいにち発コリアン社会

朝鮮舞踊の新たな可能性を

ザ・コンボイショウVol.20「PENGUINZA」に出演中・李順和さん


 身長180センチ以上の男性たちが休まずに約3時間、芝居、コント、歌、タップダンス、楽器演奏などを披露する「ザ・コンボイ・ショウ」(作・構成・演出、今村ねずみさん)。1986年から始まり、昨年は15万枚のチケットが即日完売するほどの人気だった。今年は番外編として、オール女性キャストのみで行われているが、文芸同福岡で舞踊部副部長を務める李順和さん(24)が出演している。「朝鮮舞踊手・李順和とは、また一味違った部分を見てほしい」と語る。

 今年の「ザ・コンボイ・ショウVol.20『PENGUINZA』」は、3月16日から全国ツアーが始まった。

 去年の5月、ショウを観た李さんは「1度こんな舞台に立ってみたい」と思った。折りも折り、オーディション募集のチラシを手にする。

 「今まで身につけた朝鮮舞踊をバネにして、さらに幅広く新たな世界へと挑戦してみたい」――。そんな思いから、すぐに応募した。書類審査を通過し、1次審査もクリア。最終審査にまで進んだ。9月末に行われた最終審査では、朝鮮舞踊を披露。それが決め手となり、約1500人の応募者の中から選ばれた9人の中に入った。

 ミュージカルの主役経験者や有名歌手のバックダンサーなど、オーディションに集まった人たちの中には舞台経験のあるプロ・セミプロが多数存在した。そんな中、見事に難関を突破した李さんは、「『必ず受かってやる!』という意気込みはあったけど、本当に選ばれるなんて夢のようだった。最終審査の課題が自分の特技を披露することだったので、迷わず朝鮮舞踊を踊りました。もうがむしゃらでした」とふり返る。

 「舞踊の技術や表現力など、文芸同で培ったものが実を結び結果となって表れた。朝鮮舞踊にこだわってきたことが報われた感じでとてもうれしかった」

 李さんは現在、「フィマン朝鮮舞踊研究所」で舞踊手兼講師をしながら、母校の福岡朝鮮初中級学校でも、後進の指導にあたっている。

 福岡初中初級部4年の時から朝鮮舞踊とクラシックバレエを同時に習い始め、朝鮮舞踊は九州朝鮮高級学校でも続けた。卒業後は、九州朝鮮歌舞団に入団し舞踊手として4年間活動。その傍らジャズ・ダンスやタップなども習った。

 しかし、「踊り」に対する思いが人一倍強く、当時の自分にどこか物足りなさを感じていたという李さんは、歌舞団を退団。その後、朝鮮学校で舞踊の指導をしながらダンスを習い続けた。

 今の自分に何ができるのかと苦悩し、自問自答する日々が2年ほど続いた。

 「この頃は『変化』したいと思っていた時期で、そのためには何をやればいいのか本当に悩んだ。舞踊手としての可能性を探ってみたい、これがオーディションに応募した1番の理由です。出演することにより、若い世代の同胞たちに幅広い分野で活躍する舞踊手もいるんだというのを知ってほしい。いろんな要素を取り入れることにより、朝鮮舞踊の表現方法は無限に広がりをみせるはず。そういったものを表現できる『李順和』であること。そんな1人になりたかった」

 この間、多くの地元の同胞たちに支えられたと、感謝の気持ちを忘れない。

「福岡での仕事を中断して、公演に出演するのがとても心残りで…。でも最後には地元の同胞たちは、精一杯やってこいと応援してくれました」

 女性のたくましさやしなやかさを前面に出した公演では、躍動感あふれる一味違ったさまざまなダンスが披露される。

 「舞台で『独舞』を踊る場面があるんですが、全国の同胞たちにこういった形でも朝鮮舞踊を表現できることを見てもらいたいし、踊りに賭ける意気込みも感じとってほしい。日本の人々には、朝鮮舞踊を知ってもらい広めていく機会になれば。これからも『朝鮮舞踊あっての李順和』は永遠に変わらないと思う」(金明c記者)

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 「ザ・コンボイ・ショウVol.20『PENGUINZA』」ツアーは6月7日まで。愛知、広島、福岡の3会場で残り計5公演が行われる。

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