名山中の名山
「七宝山」を探訪して 〈下〉
李大熙
私たち一行は、金甲成外事課長から次のような興味深い逸話を聞いた。
すなわち遠い昔のある日、1人の探訪客が訪れた。彼は「七宝山」について「七宝山」は、清らかで奇岩絶景において金剛山であり、空高く奇抜において妙香山であり、相絡み合う光景は雪岳山であり、極み深く奇異なるは「七宝山」が勝るであろうという名句を残したと話してくれた。 以上のように「七宝山」は、高峰が競い合う地形上から見て内七宝、外七宝、海七宝と区画されている。 その内訳を簡単に記しておく。 すなわち内七宝には、五峰山(659メートル)を中心に錦繍峰と樹利峰を連結する内側と朴達峰までの空間が相接しており、外七宝、海七宝と続いている。 言って見れば、内七宝の全体が静かでたおやかであり、五峰山で覆われた上峰が相絡み合っているのが、いっそう雄大で荘厳であった。 そして内七宝の中心地に歴史的に有名な寺院がある。 それは渤海時代(826)に建立された開心寺である。
開心寺は、咸鏡北道に残存する最も大きな歴史遺物である。 開心寺は、大雄殿を中心に多くの仏閣や神堂で構成されていて、その華燭な荘厳さは「七宝山」の風景にも合致している。 開心寺の黄住職は、なかなかの話上手で身振り手振りで次のように話してくれた。開心寺は今から約1300年前に建立された有名な寺院であるばかりでなく、多男多女の安産祈願寺としても広く知られているとのこと……。 次いで外七宝は、内七宝とは対照的であって、険しい山脈と渓谷を形作っているため、いかにも毅然として勇猛である。また、海七宝の火山噴出時代に発生した断崖が、長い歳月を経ながら風雨と波濤の作用によって変化し、強い気象の変動からいっそう光輝いている。海七宝の海岸沿いに気圧峰があり渓谷もまた絶妙であって、奇岩、怪岩の不思議な夢の世界を思わせる。この観光路を回り巡れば、色鮮やかな花びらが春光の恵みを浴びながら咲き乱れる光景はまるで花園のようであった。 私たち一行は、一夜を明かした翌日の4月18日の昼下がりに海七宝の第一景勝地といわれる海門峰(月門)の海辺で昼食のひとときを過ごすことができた。準備された料理は海七宝の近海で釣り上げたという魚介類で毛ガニ、ムール貝などの炭火焼きの珍料理であった。その旨さに舌鼓を打ち、酔いしれながら各自の隠し芸を披露した。 その最中に突如として濃い霧に包まれた。側の人の判断もつかない暗闇の瞬間だった。と思えば、眼下に広がる海面に浮かぶ七色の美しい虹が出没した。自然の織り成す景色とはいえ稀に見るできごとに、実に万感の思いであった。 「七宝山」の観光受け入れ体制は進んでおり、宿所も内七宝中心部に山1つ挟んで2カ所(100人収容)に点在している。 私はこの旅程を生涯忘れないだろう。(社協中央顧問) |