6年連続で会員増

岡山地域商工会を訪ねて


 日本経済の低迷が続く中でも、6年連続で会員数を増やし続ける岡山県商工会。その秘訣を探るため、傘下の岡山地域商工会を訪ねた。

口コミで広がる

 岡山市郊外にある岡山地域商工会経理室。記者が訪ねた日はちょうど法人決算の真っ只中とあって、職員たちは息つく暇もない。電話がひっきりなしに鳴り、パソコンのキーボードを叩く機関銃のような音が規則的に聞こえてくる。まさに「戦場のような忙しさ」だ。それでも、ピリピリと張り詰めた緊張感はなく、みな和気あいあいとした雰囲気で仕事をしている。

若さあふれる岡山地域商工会経理室

 6年連続で会員を増やしてきた岡山県商工会。その拠点が岡山地域と倉敷地域の2つの地域商工会だ。

 岡山地域商工会経理室で経営経理部長兼経理室室長として働く金督基さんは、朝大政経学部卒業とともに配属されて8年になる。

 金室長いわく「単純なようだが、同胞のために仕事をするのが一番の秘訣」。「会員獲得運動」など特別にやっているわけでもないが、会員が新しい会員を紹介してくれる。「口コミで広がっているようです」

好評を博した朝鮮食材販売コーナー〈昨年の岡山焼肉まつり〉

 時には税金や商売の話だけではなく、結婚や就職、相続などの相談にものる。人間関係でつながっているから、少々のことでは関係が壊れることはない。

 「若い職員たちには、同胞のことをまず考えるようつねに指導しています」と金室長。「ビジネスと割り切るのではなく、人間的なつきあいを大切にするということです」

 それが十分に発揮されたのが、昨年10月、BSE(いわゆる狂牛病)騒動で風評被害が深刻化する中、焼肉協議会の主催で開かれた「岡山焼肉祭」だ。商工会の職員たちは勧誘をする際、融資申請書も携えて、売上減少に悩む同胞のお店を1軒1軒訪ね歩いた。そうした行為に、同胞たちも感じ入り、1000余人を超す参加者があった。その後もつきあいが続いているのは言うまでもない。

先輩から受け継ぐ

 「このような考え方は先輩たちから受け継いだもの。わが商工会の伝統です」と語るのは朴現徳総務部長。

 「会員に誠心誠意接すれば、『商工会』ブランドに対する信頼感が自然と生まれる。だからこそ、会員が口コミで広げてくれる」「そのためには地道に仕事をするのが一番だが、それは今まで先輩たちが数十年かけてやってきたこと」

 この伝統は後輩たちにもしっかり受け継がれている。

 広島朝高を卒業し経理室に務めて5年目になる李志碩さんは、「やりがいがある」と胸を張る。最初の2年間はわからないことだらけだったという李さんだが、徐々に仕事を覚えるにつれ、担当の同胞商工人からも信頼を置かれるようになったという。

 「実際に経理を見るようになってからは『食事に来い』と声をかけられるようになった」

 朝大経営学部を卒業して今年配属された朴日善さんは、「今はとにかく一人前の社会人になるために勉強中」と言いながら、「学生時代のように甘くない。同胞の要望にきちんと応えられなければ、信頼をなくし職場全体に迷惑をかける」。李志碩さんとは高校時代の同級生。「4年早く社会に出た李君を見ていると、自分とは違う。見習う点が多い」

情だけではダメ

 同地域商工会では、職員たちの実務能力アップのための対策も怠らない。

 毎週土曜日は実務学習の日。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士、税理士、行政書士など、それぞれ目指す資格取得のための勉強が主だ。

 「商工会会員も情だけではつきあってくれない時代。いくら同胞のためにやっているといっても、メリットがなければだめだ。実力が伴ってこそ、信頼も得られる」(金室長)

 そんな岡山地域商工会。部屋の明かりは夜10時が過ぎても消えなかった。
(文聖姫記者)

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