田中康夫県知事長野初中級学校訪問

4時間にわたり授業を参観、懇談会


 田中康夫・長野県知事が5月28日、長野朝鮮初中級学校を訪れた。知事が同校を訪れるのは、1969年の創立以来、初めてのことだ。今回の訪問は、学校行事に参加するといった儀礼的なものではなく、授業を参観し、生徒、学父母らと交流することを目的としたもので、4時間にも及んだ。その間、生徒たちと昼食をともにし、記念写真を撮るなど終始、和気あいあいとした雰囲気に包まれた。゙正雄校長は、今回の訪問について、「行政に民族教育への理解をさらに深めてもらう良い機会になれば」と話していた。(金美嶺記者)

「どんな仕事するの?」

「知事ってどんな仕事をするんですか」。生徒の質問に思わずにっこりする田中知事

 教員、生徒、学父母、総聯本部関係者らの歓迎を受けた田中知事は、校長室で゙校長から同校の歩みについて説明を受けた後、総聯長野県本部の李光相・委員長、李盛吉・長野朝鮮学園理事長、朴遵香・女性同盟県本部委員長、朴喜洙アボジ会会長、朴玉子オモニ会会長、李源文・同校新校舎建設委員会委員長らとあいさつを交わした。

 ゙校長の案内で幼稚班から初級部、中級部各学年の授業を参観した後、田中知事は、体育館で行われた生徒たちとの懇談会に臨んだ。

 そこで、「ぼくの親は、田中知事になってから県のニュースをよく見るようになりました。知事って、どんな仕事をするのですか?」「私たちは、近所の日本学校とも交流しています。これからどんなことをしていけばいいと思いますか?」などの質問を受けた知事は、緊張し照れ気味の生徒たちに、わかりやすく丁寧に答えていた。

 生徒たちとの懇談会に先立ち行われた文化公演では、重唱「リムジンガン」や打楽器演奏など、日頃のサークル活動の成果を思う存分発揮する生徒たちに、大きな拍手を送っていた。

外国籍でも長野県民

 次いで行われた学父母との懇談会では、日本人と同じように納税の義務を果たしている在日朝鮮人が、学校の問題で差別を受けるのは、納得いかないといった意見が出た。

 長野県はこれまで朝鮮学校に対し、決まった補助金を出していなかったが、今年4月から私立外国人学校振興費補助金として年間1人あたり、1万6320円が支給されるようになった。しかし、これは、あくまでも各種学校としての補助にすぎず、学父母の負担は大きい。

食堂では生徒に名刺を配り「メールしてね」と気軽に声をかけていた

 オモニ会副会長の朴澄枝さんは、「朝鮮学校は、全国に100以上もあるが、法的に各種学校扱いのため、地方自治体からの補助金はとても少ない。現在、本校には3台の通学バスがあるが、走行距離は年間3万キロにも及ぶ。子どもたちの安全のために3年に1度は、買い換えている。これもすべて、学父母の負担だ。学校での健康診断も、個人負担だ。進んでいる他県を参考に、長野県独自の保護者補助金制度を設けるなど、助成金の増額をしてほしい」と訴えた。

 また、同校卒業生で学父母である崔千晃さんは「故郷は朝鮮半島の南だが、この長野初中が本当の故郷だと思って、守り、支えてきた。つい先日、みんなで平壌で行われているアリラン公演を観覧してきた。祖国に対しても誇りを持っている。異国にいるからこそ言葉や、歴史を学ぶ民族教育は不可欠だ。長野の国際化に役立つであろう人材が育ち、日本の国際化のためにも、朝鮮学校を認めることは、決してマイナスにはならないはずだ」と語った。

 こうした意見に田中知事は、阪神・淡路大震災の際、同地域の同胞と交流した体験に触れながら、「学校を参観し、生徒と先生が同じ目線でいることに好感を持った」と感想を語った。また「外国籍であっても同じ長野県民だ。今日学校を訪れたことが今後の交流のきっかけになれば」と指摘しながら「父母たちの意見については資料を集め、検討していきたい」と強調した。

 中級部3年生の親である張佳子さんは、「日本学校出身の私は、のびのび育つ子どもたちを見て、民族教育の大切さを実感している。知事が、今日学校を訪ねてくれたことは、とてもうれしい。朝鮮学校の存在を多くの人に知ってほしい」と語っていた。

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