ざいにち発コリアン社会
民族教育守った地域の歴史
若い世代中心に山口でビデオ製作中
民族性を守っていくためには、1、2世の先輩たちが民族を守るためにいかにたたかってきたかを知らねばならない――そんな趣旨から、山口県在住の3、4世たちが中心となり、県の民族教育の歴史をつづったビデオ制作に取り組んでいる。
貴重な証言続々
タイトルは「ウリヌン ミレウィ 主人公(私たちは未来の主人公)」。サブタイトルは「山口民族教育の歩み 過去、現在、未来」。「ウリヌン ミレウィ 主人公」制作委員会が担当する。 今年2月、プロモーションビデオを上映したところ、同胞たちの間で大きな反響を呼んだという。 内容は、「過去、現在、未来」というサブタイトルからもわかるとおり、祖国解放後、1世同胞らが朝鮮学校を建設し発展させてきた過程を中心に描く。 とくに、1世らが日本当局とGHQ(米占領軍司令部)による朝鮮人学校閉鎖令に抗議し山口県庁前で抗議の大会を開いた様子を写した当時の写真などは見応えがある。 大会に参加した李鐘順さん、崔順愛さんらが、その時歌った歌を思い出しながら歌う場面も登場する。学校が閉鎖される時、4年生だった朴鐘武さん、警察が学校に乱入した時、中等部生徒だった金慶子さんらの証言なども紹介される予定だ。当時の状況を知る人々の貴重な証言が続々登場する。 出版パーティー機に 「ビデオを制作するようになったのは、昨年3月にあったある出版パーティーがきっかけなんです」 ビデオ制作で中心的役割を果たす山口県朝鮮人強制連行真相調査団の金静媛事務局長(41)は話す。 「朝鮮人強制連行調査の記録―中国編」(朝鮮人強制連行真相調査団編著、柏書房)の出版パーティーの際、強制連行の歴史をつづったビデオを流すことになった。広島朝鮮歌舞団のメンバーがパソコンを使って、ビデオ作成。山口朝鮮歌舞団メンバーの李結華さん(30)がナレーションを担当した。 その制作過程で、民族教育を守ってきた歴史をビデオにまとめたらどうか、という話が持ち上がった。 それから3、4世ら若い人たちが中心となって準備を進めていった。当時を知る証言者を訪ねたり、同胞たちから写真を集めたりした。あらためて探してみると、懐かしく貴重な写真がたくさん出てきた。 手始めに昨年、下関支部の忘年会でその写真を中心に作ったスライドを上映したところ、同胞たちは大喜びだった。 1世は当時のたたかいの状況を思い出して涙ぐみ、2世は若い時の自分の姿に思わず笑いがこみ上がる。これをきっかけに、あらためて民族教育の歴史を振り返る人々が少なくなかった。 今年に入ってから本格的にビデオ制作が始まった。総聯映画制作所に勤める山口朝高OBもボランティアとして参加。そうやってできたプロモーションビデオを、2月の行事の際、5〜600人の同胞の前で上映した。 今後の発展のため 制作の中心は3、4世。李結華さんもその1人だ。 「朝中、朝高時代はまったく関心がなかった。でも、昨年末にスライドを上映した時、1世同胞たちが涙ぐむのを見て、自分たちのやっていることの意義を感じた。1世らがどんどん少なくなっていく中で、きちんとまとめて残しておくべきだと切実に感じる」と意気込みを見せる。 「幼い時からウリハッキョに通うのが当たり前だった。でも、学校を守るためにどんな苦労があったのか、その犠牲の上に今の学校があることを、後輩たちにもきちんと伝えていきたい。それが今後も、民族教育を発展させていく原動力になると思う」 ビデオ制作に携わる若い世代の思いは共通している。(文聖姫記者) |