「アリラン」が描く未来像

―祖国を取材して―


 4月中旬から5月末にかけて5年ぶりに取材で祖国を訪れた。短い滞在期間ではあったが、「朝鮮情報」がはんらんする日本において、決して伝わることのない本当の姿を垣間見ることができた。

確固たる信念一心団結の力

 「『アリラン』を通して、世界は朝鮮の真の姿を見るでしょう」

朝鮮の過去、現在そして未来を鮮やかに描き出す「アリラン」

 滞在期間、平壌でたびたび耳にした言葉だ。経済状態が依然として厳しいことは確かだが、「アリラン」が発信するメッセージや、市民の言葉の端々からは、虚勢やまやかしではない、自らの進む道に対する確固たる自信を見て取れた。

 サッカーにおいてサポーターはしばしば「12人目のプレーヤー」に例えられる。彼らの応援や、それらが生み出す一体感、諸々のサポートは選手1人分の働きに相応する場合が多々あるからだ。

 出演者を支える家族、公演のスタッフ、平壌市民。「アリラン」の出演者は10万人だが、関わる人たちはそれより遥かに多い。サッカーのサポーターに例えるのは少々強引かもしれないが、その存在を抜きにして「アリラン」の成功はありえないというのが市民の一致した意見である。実際に公演期間、全国から出演者への援助物資が届けられているという話も聞いた。

 祖国の人々の挙国一致の姿勢は、幾多の困難を乗り越えてきた一心団結の力で平和統一を成し遂げようとする、強い意志の表れであるように思えた。

変わるものと変わらないもの

 各国政府・党の代表団や各分野の要人の訪朝が相次ぐ中、平壌にいながらにして「世界の中の朝鮮」も肌で感じることができた。

 「相互尊重と互恵に基づく国際関係の流れは誰にも押し戻せない」。チャン・ドック・ルオンベトナム国家主席の訪朝に同行したベトナム共産党機関紙「ニャンザン」の記者は言った。

 ドイツ議員代表団についていた駐朝ドイツ大使館員の1人も、「対等なパートナー」としての両国関係を強調していた。

 相互尊重の精神に基づく朝鮮の対外政策は一貫している。変わったのは周囲かもしれない。

 訪朝したブラッターFIFA会長やフランジアリWTO事務局長は盛んに、朝鮮の持つ「潜在力」や「可能性」という言葉を口にした。秘められた「潜在力」や「可能性」を解き放つ作業はすでにさまざまな部門で始まっているのかもしれない。

 ふたたび動き出し始めようとしている朝鮮半島情勢。さまざまな要素が複雑に絡み合い、日々変化する状況の中でも、根底に脈々と流れてきた大きな流れは変わらない。

 変わりゆくものと変わらないもの。「アリラン」に沸く平壌で、それらを見た気がした。(李相英記者)

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