景況DI 初めて日本企業上回る

2年目に入った定期景況観測


 商工連経済研究室が行っている同胞企業定期景況観測も4月の調査で2年目に入り、一年前との比較ができるようになった。「同胞経済研究」2002年夏・第5号に掲載された4月の観測結果を抜粋して紹介する。

概況

 今回調査で2年目に入り1年前と比較ができるようになった。

 日本政府は5月の月例報告で実質的な「景気底入れ」宣言を発表したが、当調査の結果を見る限り同胞企業の底入れはまだ先のようだ。

 ただ日本の中小企業よりつねに悪化傾向にあった景況DIが今期初めて上回り、来期も上昇の見通しである。

 今回調査結果で現れた特徴としては、同胞企業の人手(雇用)過剰感が増していることである。日本の中小企業(▲20)より人手過剰感は低くなったが、徐々にその幅は縮まってきている。

景況

 景況DI(「良くなった」―「悪くなった」)は▲43となり、前期比で5ポイントのプラス。前期調査時(02年1月)の見通しより9ポイント上回った。来期の見通し(「良くなる」―「悪くなる」)もマイナスながらも着実に▲41と上向いている。

売上・仕入

 売上高DI(「伸びた」―「落ちた」)は▲41。前期と比べ▲3ポイント下げ、来期の見通し(「伸びる」―「落ちる」)は▲37と一進一退が続いている。

 仕入価格DI(「上がった」―「下がった」)は▲9と前回調査と同じ。来期(「上がる」―「下がる」)は▲3とデフレに歯止めがかかる可能性も出てきている。

採算・資金

 採算状況DI(「良くなった」―「悪くなった」)は▲45と依然厳しい。

資金繰りDI(「良くなった」―「悪くなった」)は▲38と前期比9ポイントアップし、前期調査時の見通しより12ポイント上回った。

設備・人手

 設備DI(「足りない」―「余っている」)は10と下落傾向から持ち直し、設備不足感が増してきている。

 人手DI(「足りない」―「余っている」)は▲15。来期(「足りない」―「余る」)も▲17と一貫して下落している。

業種別動向

遊技業

 遊技業は景況DI、資金繰りDIで全企業を若干下回る程度で、全般的には他の業種に比べると良いといえる。ただ業界では勝ち組、負け組の二極化が激化し、倒産企業が過去最悪の状況の中、一概には良いとはいいきれない。

 設備DIは相変わらず不足状況が続いている。発表される新機種の中で人気機種が少ないため、つねに 台不足 にあるようだ。

土木・建築業

 景況DIと資金繰りDIは、昨年7月調査を底に上向いてはいるが、▲40台にとどまっている。売上高では、DIが他の業種の中で1番悪く、伸び率は▲29%と大幅下落である。

 人手DIに至っては▲40で、前年同期比51ポイントも下落した。公共工事は国・地方の財政面での制約によってさらに縮小傾向。今後も厳しい状況が予想される。

金融業

 同胞企業の金融業も、今回の調査結果を見ると大変厳しい状況にある。とくに2000年6月からの上限金利の引き下げは、それまで小規模業者の貸付平均金利より下回ったため売上高DI、採算状況DIの悪化としてあらわれていると思われる。

製造業

 景況DIは業種の中で最も悪く、売上高DIも前年同期比で20ポイントも下げた。設備DIは前期比で伸びたものの来期の見通しは大幅に下落、人手DIは一貫して下落傾向にあり、設備、人手ともに過剰感は払しょくされず、さらなるリストラが求められている。

飲食業

 BSE(狂牛病)問題がくすぶる中、焼肉店では売上、客数の回復した店とそうでない店と明暗が分けられている。景況DIは前期比で伸び、売上高DIは昨年10月調査から急上昇し来期も上向いている。ただ仕入価格DI、採算状況DIや資金繰りDI、設備DIは思わしくない。

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