新設組合の開業を妨害する不穏な動き


 多くの在日同胞の参加のもと去る3月、近畿および関東で新しい民族金融機関の設立総会が開かれた。新しい民族金融機関を立ち上げるため、同胞たちは厳しい経済状況の中、懸命に努力した。

 新設組合の設立発起人と準備委員たち、そして多くの関係者が献身的に動き、商工人と同胞から出資金を募った。在日同胞の大半は、零細企業や家内工業、食堂の経営者やサラリーマンであり、決して日々の生活は楽ではない。長期化する経済不況の中で出資金を捻出するのは大変なことだったが、同胞がみな心を合わせて立ち上がり出資金を準備した。

 こうして新設組合の設立に必要な一連の手続きを経て、3月20日に設立認可を受け、近畿では28日に「ミレ」「京滋」「兵庫ひまわり」の3組合が、関東では29日に「ハナ」が受皿組合としての適格性認定を受け、預金保険機構にたいして資金援助申請を行った。

 このことは、新たな組合の設立の必要なすべての法的、行政・実務的な手続きが終了したということを金融当局が認めたことになり、新設組合は営業開始の準備を早めることになった。

 ところが、最近、一部の勢力は、日本の国会においてまで在日同胞の新しい民族金融機関の開業に反対し、マスコミを使って世論を誤った方向へと導き、新組合への公的資金の投入と営業開始に人為的に障害をつくりだしている。

 日本の一部の政治家とマスコミは、すでに設立認可を受けた新設組合が開業準備を進めている最中に、ありもしない「政治問題」を持ち出して執拗に中傷し、開業にブレーキをかけている。

 ある国会議員は雑誌「正論」で、朝銀問題は「いっけん金融問題のようでいて、実はわが国の安全保障に関わる問題」であり、公的資金が「(北朝鮮に)『プレゼント』されるわけだが、そうはいかない」と言い立てている。『週刊文春』にいたっては、朝鮮の最高指導者まで中傷し、総聯幹部にたいして「公的資金が注入されたら、そのすべてをこちらに送金しなさい」との「指令」を下したという、まったくの嘘偽りを平然と書き連ねている。

 また、雑誌「金融ビジネス」は首相官邸スタッフの話しとして、「(朝銀処理問題は)北朝鮮の不審船引き揚げ問題や拉致問題も連動している」「完全に外交問題となりつつある」と、新しい民族金融機関の開業問題とは何ら関わりのないことも書き立てている。

 これら一連の不穏な動きとマスコミ報道は、まさに新しい民族金融機関の開業と営業正常化を妨げようとする勢力の黒い思惑を代弁するものであり、断じて許しがたい。

 近畿および関東の4つの組合は、日本の法的・行政的手続きを踏まえ、設立総会において日本当局が求めた定款にしたがって新役員を選出し、設立認可を受けて開業のための万端の準備を整えた。

 ところが、最近になって当局は突然、定款を拡大解釈しながら、自分たちが求めた定款にもない無理難題をもちだした。

 ある日本の当局者は、公然と総聯の団体役職者や関係者すら役員でいる限り、公的資金は投入できないと言い放ち、誰の意向を代弁したのか産経新聞は、4月27日付社説で「預金者や借り手を守るには、新設組合の経営トップに日本人を迎えるのも一考ではないか」と書き、同胞組合に日本人理事長を登用する問題をもちだして当局の意図を露骨的に世論化しようとした。

 定款にも明らかにされているように、新組合の組合員資格は、朝鮮人および朝鮮人が代表者となっている公認された法人である。

 にもかかわらず、その組合の理事長に日本人を据えようとすることは、当局が求めた定款に反するばかりか、組合の存立基盤とその運営にも合致しない、法外な要求といわざるを得ない。

 在日同胞は、実際の生活体験を通じて、自らの経済的権益を代弁してくれる民族金融機関が絶対に必要であると考えている。それゆえ、日本の経済状況が悪化し、金融不安が広まる中でも、全力を尽くして出資金を募り、新組合の設立に向けて奔走したのである。

 ところが、もともと予定していた新組合の開業日が大幅に遅れたばかりか、日本の経済環境がいっそう厳しくなることによって、同胞商工人の廃業・倒産が急増する深刻な事態が生じている。

 新組合が、組合員の志向にしたがって、民族金融機関として開業に速やかにこぎつけることは、商工人をはじめ在日同胞の民族的権益と関連する重大な問題であり、まさに生存に関わる切迫した問題である。

 いま組合員たちは、民族金融機関の民族的な性格をなくそうとする民族差別の動きを憂慮しており、新設組合の速やかな開業を当局に求める声が日々高まっている。

 組合員たちは、法治国家を名乗る日本当局が公平に預金保険法と行政的手続きにのっとって、新組合の開業と運営正常化を1日も早く保障するであろうと、その対応を注視している。

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