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見えない幸せ

徐正善


 僕らの通う和歌山朝鮮初中級学校では、バレーボールが盛んです。部の歴史は学校創立(1958年)時からと古く、僕の父の時代は強豪でその名を全国にとどろかせていたほどです。最近では16年前の在日本朝鮮学生中央大会優勝以来、目立った活躍がなかったものの、2年前、東大阪や滋賀といった強豪を下し、久々に優勝を勝ち取りました。当時中1だった僕は、微力ながらメンバーに加わり勝利の喜びを味わいました。

 しかし現在、中級部男子バレーボール部のメンバーは僕を含め3人。頭数がそろわないため、試合も出来ません。そればかりでなく、不便な点もたくさんあります。自分で打ったボールを自分で拾いに行くのは当たり前。どんな練習でも自分の番がすぐに来るので、休む暇もありません。「3人では試合もできないのになぜ続けるのか?」という意見もあります。でも僕は「辞めよう」と思ったことは1度もありません。

 3人でもできる練習はたくさんあります。パスやアタック、スタミナをつけるためのトレーニングなど基本的なメニューを毎日欠かさずこなしています。女子と練習試合も行います。

 3人の間には「先輩・後輩」関係はありません。幼い頃からともに過ごしてきた兄弟、バレーボールを通してつながっている親友なのです。僕らはいつも声をかけ合いながら雰囲気を盛り上げています。たとえ1つのチームとして試合に出られなくても、3人でバレーボールを楽しみ怠けず、僕が部の一員である「今」を悔いのないようにしようと思っているのです。

 みなさん! 大切なのは人数や環境ではなく、メンバーが互いに励ましあいながら、心から練習を楽しむことではないでしょうか。 普段は見えないけれど、日々の生活の中で何かを楽しみ、笑えるということが本当の幸せだと思います。その幸せとはただ待ち望むのではなく、探してこそみつかり、努力してこそ自分のものになるものだということを、部活を通して学びました。

 部活だけでなく、僕は朝鮮人に生まれ、こんなに楽しいウリハッキョに通うことができて本当に幸せです。僕の学校は人数は少ないけれど、それに負けない喜びがたくさんあふれています。僕はこれからも朝鮮人として堂々と生きていこうと思います。今ある幸せをかみしめながら…。

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