取材ノート
統一問題はここにも
のどかな所だ。バスを降りて道なりに10分ほど歩くと茨城県自然博物館に着く。自然に囲まれたすばらしい博物館だ。すぐ目の前に湿地帯が広がる。総敷地面積は日本一らしい。博物館だけでも3本の指に入るとか。
さて、16日に同館で行われた国際シンポジウム「コリアの自然史は今」。内容は、朝鮮半島と日本列島の自然史に関する両地域の研究者がそれぞれの論文を発表しあうもの。 これほどのシンポジウム、さぞかし歴史も…と思いきや、意外にも「初めてじゃないでしょうか」(中川館長)という。 「朝鮮半島および日本列島をひとつの地域とみなすのは、東アジア自然史研究の大前提」(東大の樋口教授)。そして今回の運びとなった。 「3年前から企画・準備を進め、今日やっと実現した。だが、もっと早くできていれば…という思いが拭いきれない」(事務局の山崎さん) 事情がなかなか許さなかった。複雑で不安定な政治情勢、水面下でくすぶる両地域の感情、相互の情報不足、靖国参拝、教科書問題、政治家の「遺憾な」妄言、過去清算、国交正常化問題…。 一昨年の北南首脳会談が空気を一変させた。サッカーW杯も共催している。両地域が新たな段階に入ろうとしている。でも何かが足りない。 「北からの参加者がいないのは残念だ。会えるのを楽しみにしていた。来日できないことは知っていたが、もしや、という思いがずっとあった。統一問題はここにも存在する」(韓盛繧ウん) それぞれの研究成果を共有し、幅広く意見交換をすることに意義があった今回のシンポジウム。 「本当の意味で成功したとは思わない。一日も早く朝鮮から研究者を招きたい」(中川館長) この言葉が今もよぎる。(健) |