車ドゥリと民族精神


 W杯で大活躍した「韓国」FW車ドゥリ(高麗大生)のコメントに心打たれるものがあった。「尊敬する人は?」と聞かれて「父(車範根前ナショナルチーム監督)と安重根」と答えた。

 車ドゥリはドイツリーグに籍を置いた父の下で、10歳までドイツで育った。英語やドイツ語にも堪能だと言う。日本風に言えばそんな21歳の「帰国子弟」に、侵略者・伊藤博文を倒した民族独立の英雄・安重根を敬愛する熱い民族心が脈打っていることに感動を覚えた。

 それに反して情けないのは、前駐日大使崔相龍高麗大教授の言葉。「民族が強調されすぎると逆にナショナリズムが高まりませんか」というナショナリズムの高揚を暗に非難する日本の記者の質問に「そこが問題だ」と同調してみせた(朝日新聞7月3日付)。一見もっともらしい言質の中に、この人物の本音が見える。

 崔がかつて師事した坂本義和東大名誉教授は、本紙のインタビューで民族や民族主義が持つ意味が、日本と朝鮮とでは基本的に違うという歴史的理由があると述べ、「朝鮮の場合は民族主義は、大国の支配からの解放の思想であり行動である」「日本の場合は大国支配を支えるものが民族主義であり、日本の国家主義だった」(00年8月14日付)と明快に語った。

 恩師に合わせる顔がないのではないか。車ドゥリの若鮎のような真っ直ぐな民族精神に学び直した方がよい。(粉)

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