不法な「北方限界線」

停戦協定でも論議せず米軍が一方的に線引き


 既報のように、6月29日に発生した西海上での武力衝突事件で、南朝鮮軍部の発表がうそであったことが明るみに出た。

 しかし、南朝鮮軍部の「北の警備艇が『北方限界線』(NLL)を侵犯したことは、停戦協定違反であり、すべての責任は北にある」という主張自体、実は成り立たないのである。

 そもそもNLLは、53年8月30日、停戦協定に反対していた李承晩政権の単独北進を防ぐため、国連司令部が一方的に引いたものだ。つまりNLLは北と南、あるいは北と米国間で合意されたものではない。

 だから、NLL侵犯が停戦協定違反なのではなく、NLLを合法的なものであるかのように主張する南が停戦協定に違反しているのである。

 53年7月27日に締結された停戦協定では、地上の軍事境界線については取り決めがなされたが、海上の境界線については意見の一致を見ることができず、決められたものはない。そして今現在も、海上に決められた境界線はない。

 現在、西海上には99年7月21日に行われた板門店朝米軍部将官級会談で、朝鮮人民軍が米軍に新たな西海海上境界線の設定を提案し、そのための実務接触の開催も提案したが、米軍も南朝鮮軍も応じなかったため、北が仕方なく9月に発表した海上境界線と、2000年3月に発表した5島通行秩序、そして南側が設定したNLL、NLLから4.5マイル南下した地点の漁業阻止線、さらにそこから1.5〜2マイル南下した漁場周辺に設定された漁業統制線などがある。

 これらのラインには、北南間で合意されたものは1つもない。

 事の解決には、停戦協定を平和協定に代える会談が必要である。クリントン政権時代に締結された、朝米共同コミュニケには「朝鮮と米国が朝鮮半島での緊張状態を緩和し、53年の停戦協定を強固な平和保障システムに転換して朝鮮戦争を公式に終息させるために、4者会談などのさまざまな方途があるということで見解を共にした」と明記されている。

 今回のような突発事故を防ぐためにも、1日も早い会談が望まれる。

窮地に立つ南軍部

 今回の武力衝突事件の責任が南にあるという事実が南内部から明るみに出たことで、事実を隠ぺいしていた軍部は困惑を極めている。

 軍当局は、漁民の越境が事件の原因だと判明してからは、やむなくそのことを認めた。しかしながら当初、原因は北の「意図的な挑発」と主張してきた軍当局としては、自らのうそを認める事になり、越境漁船に対する態度をはっきりと示していない。

 4日付のハンギョレ新聞(インターネット版)は、「軍当局としてはこうした事実を認めた場合、窮地に追い込まれる事になる。まず今回の西海交戦の責任を漁民に転嫁しようとしている印象を与えるかもしれない。また、今回の事態で各政党が厳しく対立しており、政争に巻き込まれることも憂慮している。その結果、軍は漁船の越境と交戦を直接結びつけることはできないことを強調している」と報じた。

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