在日同胞の要求と志向にそった信用組合に
現在、日本当局の不当な要求によって、近畿と関東地方の新設組合への公的資金の投入と組合の営業開始が遅れている。
今日生じた深刻な事態に直面し、組合員をはじめとする多くの同胞は、当局の思惑と狙いに、民族的な憤りを禁じえないでおり、いかなる状況においても新設組合を同胞組合として、民族金融機関として固守し発展させていこうという決意をさらに固めている。 日本人理事長の登用は不当な強要 法的に認定された公的資金の投入を遅らせながら、在日同胞の信用組合に日本人理事長を登用せよという当局の求めは、日本のいかなる現行法にもなく行政上の慣例にもみいだせない、不当な要求である。 われわれは、新設組合がすでに業務を開始しなければならないにもかかわらず、当局が意図的に開業を遅らせ、組合の存続を脅かしながら組合員の間に焦燥感をかもし出し、事態を複雑にして日本人理事長の登用を強要している策動の本質と不当性をはっきり知らねばならない。 その不当性はまず、組合の出資者である、組合員らの総意と民主主義による手続きをまったく無視していることにある。 金融庁の指導のもとで行われた組合の設立総会において正式に選出され当局も認めた理事長を、無理やり交代させようとするのは、組合員自身が決定した事柄を強権により撤回させようという政治的介入であり、法にそった手続きさえもじゅうりんする乱暴な不法行為である。 その不当性は次に、「預金保険法」の精神とその公正なる適用にも反しているというところにある。 当局がさる3月に受け皿組合としての適格性をすでに認めた新設組合に対し、公的資金を速やかに投入するのではなく、ここにきて公的資金投入の「条件」として日本人理事長の登用を付け加えてきたのは、預金者による預金全額を保護し、金融不安をとりのぞき、金融システムの安定を保障するという「預金保険法」の要求にも著しくもとることである。 とりわけ、ごく一部の国会議員らで構成されたいわゆる「超党派議会」が、朝銀問題について騒ぎ立てながら、公的資金の投入を遅延させ結果的に、在日同胞社会の中で不安を招くとともに、商工人らの破産と廃業をもたらし、破たん組合の資産悪化をも促進させたという厳然たる事実は決して黙認できることではない。 日本人理事長に固執する当局の不当性はまた、信用協同組合の設立趣旨と存立自体を否定し無視する行為だということにある。 本来、信用協同組合というのは、一般の銀行とは違って、利害関係の共通性を持つ地域や業域、職域の人々と法人らが集い共助すべく作られたもので、組合員が出資者、預金者であり、また債務者となる協同組織金融機関である。 このような協同組合的性格をもつわが組合の特徴と、今日まで半世紀にわたって在日同胞が守り発展させてきたという歴史的過程を無視し、日本企業に外国人経営責任者をすえた例まであげて、わが組合の場合も同様に出来るのではないかと考えるのは、本質をまともに見れない過ちである。 信用組合の目的の基本は企業的な利潤追求にあるのではなく、組合員同士の相互扶助にあり、出資者の総意と彼らの決心が運営上の大前提で基本だといえる。 まして、同胞信用組合の場合、同胞愛と互助精神の理念によって、地域同胞社会という自らの経営地盤を持ち、主に同胞らを対象とし運営されるということに、その固有の特性がある。 したがって、組合の経営者が所有せねばならない資質と風ぼうも当然、一般企業の経営者とは異なる。 わが組合は、民族的な差別と迫害の中で、在日同胞が互助精神を発揮して設立した信用協同組合であり、その主人公は同胞社会で代を継ぎ民族的な絆を持ち苦楽を共にしてきたわが同胞組合員である。 よって、わが組合を同胞組合、民族金融機関と呼んでいる。 それにもかかわらず、同胞組合の経営責任者である理事長に、日本人の就任を要求することは、信用協同組合の設立精神と民族金融機関の特性を無視したこじつけである。 とりわけ、当局が求めた定款にもなく行政上の慣例からも脱した要求を強要するのは、本質において、在日同胞に対する新たな民族的差別であり、重大な政治的弾圧である。 悪意に満ちた民族排他の風潮 最近、日本の一部マスコミは、またも朝銀の破たん処理に関する公的資金の投入問題と関連して世論をミスリードする謀略的な記事を繰り返し載せた。 一言でいって、破たんを公表したが、まだ事業譲渡をしていない朝銀信用組合に預金支払いのための「日本銀行」と「全国信用協同組合連合会」の融資がすでに執行されたことを、あたかも不当なことのように騒ぎ立てたことだ。 この問題と関連しては、2000年12月29日に「日本銀行」総裁が朝銀近畿信用組合の破たんと関連して行った談話の中で、その合法性について言及している。 彼は談話の中で、「金融再生委員会及び大蔵大臣より、当該信用組合において、預金払戻し等事業を継続するための資金が不足した場合、信用秩序の維持のため特に必要があると認められるとして、日本銀行法第38条の規定に基づく資金の貸付けの要請を受けた。これを受けて日本銀行は、政策委員会を開催し、朝銀近畿信用組合の金融整理管財人による管理が終了するまでの間、当該信用組合への資金融通のため、全国信用協同組合連合会に対し、当該信用組合の事業継続に必要な資金を供給する方針を決定した」 このように、破たんした組合に対する融資は合法的であり、これは朝銀に対してだけでなく、ほかの破たん金融機関に対しても実施されている。 にもかかわらず、あたかも朝銀に対して「不当」に融資が行われ、日本国民の税金が無駄に使われたようにつくりあげることは、社会的に反朝鮮人感情を増長させ、民族排他の風潮をあおる許しがたい世論操作だ。 さらに驚がくに耐えないのは、最近になって一部の国会議員が時と場所をわきまえず、機会あるごとにわが民族金融機関問題を共和国と結びつけて反共和国、反総聯の発言をやりほうだいにしていることだ。 法的に認定された公的資金の投入問題を、ひぼう中傷とわい曲ねつ造で「政治問題」に変え、「公的資金」が共和国に「送金」されるとか、「朝銀と総聯との関係を断絶」しなければならないなどと暴言を吐いている。 一部の政治家とマスコミの反朝鮮人感情と排他主義は、新設組合に日本人理事長を据えろと日増しにトーンを高めていることで、さらに明らかなものとして表れている。 在日同胞社会には有能な人材が多く、同胞専門家の中には民族金融機関の理事長を充分務められる人材もいる。 それにもかかわらず、新設組合の定款附記事項を政治的に拡大解釈し、同胞専門家らと適格者をすべて除いて、日本人理事長でなければならないとする彼らの主張こそ、他民族を蔑視し排斥する民族排他の表れである。 新設組合は在日同胞の志向にそって運用を 新設組合の組合員らは民族金融機関のために、非常に厳しい経済環境にもかかわらず、組合設立に要する出資金を集め、準備委員と関係者らも当局の要求と法的かつ行政的手続きにそって、開業のためのあらゆる準備をしてきた。 その過程で、速やかな開業のために、定款の附記事項を不本意ながら受け入れ、日本人常務理事も登用した。 だが当局は、民族的差別と排他によって現在、定款にもない無理難題を押し付け、われわれの歩みを阻もうとしている。 現在、在日同胞は当局の露骨な政治的意図による再三の開業遅延について、とりわけ組合員の総意をまったく無視した日本人理事長の登用強要について、義憤を禁じえないでいる。 また当局の脅迫に屈し、早くから理事長交代問題に妥協的な態度を取ったことに対して、そのことが招く深刻な結果を憂慮しながら、深い遺憾の意を示している。 聞くところによると、近畿地方の3組合は8月中旬の開業を目指して7月19日に臨時総会を開くという。 公的資金の投入は公正に実施されるべき法的処置であり、適格性を認定された組合の業務開始は当然のことであり、もっと早く実現しなければならないことで、決して当局の「好意」によるものではない。 当局は、「許認可権」をかざしながら、同胞組合の存続と同胞の経済生活を脅かし、在日同胞社会に拭いきれない大きな傷跡を残したその行為を、わが同胞らが怒りにみちて糾弾しているということを、はっきりと知らねばならない。 わが組合員は、いかなる状況においても、同胞による団結した力と組合の主人である組合員自身の判断と決心、総意でもって、わが新設組合を真の同胞組合へと、わが民族金融機関へと守り発展させていくだろう。 |