取材ノート

しんどいことあっても、トンネの復活へ


 最近は主に、「21世紀の地域同胞社会像」をテーマに取材している。豊かで明るい、民族性あふれる、相互扶助、1つのトンネのようになどさまざまな青写真を描くことができるものの、世代交代や意識の多様化などから、どの地域も厳しい状況下にある。朝銀の破たん、学校の統廃合により、「活動に活気を失った」という地域も正直いってある。これも現実だ。

 その一方で、厳しい状況を乗り越え、明るい未来を次世代に譲り渡そうと奮闘し、成果を少しずつ生んでいる地域もある。総合的に運動が展開されているところもあれば、分会、学校、商工会など、地域の実情、力量に合わせてさまざまな方向からその突破口を開こうとしているところもある。

 共通しているのは、民族教育を受けた朝鮮学校出身者が活動の中心にいることと、彼らの意識の根底に「地域同胞の発展」を願う心があることだ。それにある同胞の言葉を借りれば、「(仕事を終えての活動とあって)体もしんどいが、財布もしんどい」。もう1つ付け加えるなら、そうした同胞らの考えをまとめ、正しい方向へと運動を後押ししている専従活動家がいることだろうか。

 同胞社会の未来のために、「やるか、やらないか」「次世代はあるのか」が問われている。それは決して他人事ではない。そこで思い出すのが、50代のある非専従総聯支部委員長。結婚を機に、朝鮮学校もなく知り合いもいない地域に新居を構えた。同胞とのつながりを一切断とうと思ったからだ。それが、総聯の会員に始まり、分会委員、分会長、非専従委員長にまでなった理由は、「朝鮮大学校まで卒業して、同胞社会の発展に貢献する気があるのかどうか」を、当時の分会長に問われたからだという。

 「21世紀の地域同胞社会像」は、地域同胞社会にトンネを復活させながら、若い人のニーズに応えていくところに、ヒントが隠れているのではないか。(基)

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