いきいき健康

自然を満喫、体も丈夫に

山登りで健康管理  兵庫・宝塚市 全燦栄さん(56)


 97年4月に結成された、宝塚同胞登山の会「山逢会」の代表を務める全燦栄(56)さん。「体を動かすことが元来好きだ」という全さんは月2回の山登りを欠かさない。本格的に登山を始めてまだ6年。キャリアは浅いが、年相応には見えない肌のつや、筋肉質の体をみれば、山登りによって鍛えられた効果の程を知ることができる。

●  ●  ●

 西宮にあるセメント会社に勤める全さんはミキサー車の運転手。33年の経験を持つベテランドライバーだ。若い頃は、会社の野球部に属し汗を流した。結婚後は夫婦共働きと子育てでなかなか自分の時間を作れなかった。40代から何かしたいという気持ちをもったが、なかなかチャンスに恵まれず、50代にさしかかる時、山にめぐり合った。

 山登りのきっかけは、セメント会社の同僚に誘われて、という。

 「それまではまったく興味がなかった。年寄りがやるスポーツと自分自身で思い込んでいた。でも付き合いだから、軽い気持ちで参加した。ところが行ってみるもんだ。山の魅力にいっぺんにとりこになったよ」

 山の魅力について「自然に親しむことができること、登山中に行き交う、見知らぬ人とのふれあい」だという。そして山登りを通じ、同胞たちとの付き合いの幅が広がったこと、若者、高齢者の分け隔てもなくフランクに付き合えるようになったことは、自分にとって大きな財産だという。

●  ●  ●

 全さんは以前から健康管理に気を配ってきた。片道約10キロの距離を毎日自転車で通勤する。23歳から始めた「日課」は今日まで続いている。

 「職業が運転手。仕事以外は車から離れたいもの。自転車に乗ったり、歩くことでまた別な視界が見えてくる」

 百貨店などでもエレベーター、エスカレーターに乗らず、必ず階段を利用する。「自分の足で歩くことが健康の証、体がなまると登山にも影響を及ぼす」からだ。

 「今の私の同世代は特に健康に関心を持っている。自分なりの目的をしっかり持って、何でもいいから実行に移すことが一番大事」と持論を述べる。

 そしてこの山の素晴らしさを同胞の中に広めようと「山逢会」を結成。結成当時4人だった会員も今は45人に増えた。百名山にこだわることなく、六甲山、北摂の山を中心に季節に合わせたコースを設定している。

 「仲間が増えたのは、みな、集う場を探していたから。仲間と出会うことで励ましあい、頑張りあい、喜びあう楽しさを知った。だって山登りは競争じゃないから」

 登山会に参加した会員の中には「頭痛がなくなった。腰痛・肩こりがやわらいだ。膝が強くなった」との喜びの声も多い。「まだまだ、会員は増えそうだ。欲を言えば、若者がたくさん集まればいうことない」

●  ●  ●

 全さんには山登りをする別の大きな目標がある。それは、毎年秋に開催される兵庫県六甲全山縦走大会(総距離56キロ)に参加することだ。全さん自身が「1年の総括にしている」大会には全国から2000人のつわものが参加する。標高差約1000メートルの山道を14時間かけて駆け上がる過酷な大会だ。もちろん景色を見る余裕も、食事もろくにとる暇もない。

 一昨年から参加している全さんは見事2年連続完走。「目標があるから、歩いていても力がわく。絶対今年もやるという意気込み、完走したときの喜びがたまらない」。

 元来、健康体だが、山登りをはじめてここ数年「寝込んだことも、病院に行ったこともない」。もちろんストレスも無縁と胸を張る。

 数年後に還暦を迎えるにあたって、いつも胸に秘めているのは、足がしっかりしている限り、毎年「山に挑戦する気持ち」だ。「60〜70代の人が元気で登山する姿を見ると、力が沸く。自分もそうなりたいという気持ちがみなぎる」。

 高校生の時58キロだった体重もやっと増えて60キロ。「健康に感謝」が口癖になっている。

 「山登りは、無理なく自分のペースでできるスポーツ。まずは参加することが大切。山には、季節に応じた魅力がある。きっと生きる力、忍耐力、強い意思と精神力が山登りで鍛えられるはず」

 そんな全さんの夢はウリナラの名山を踏破すること。「日本の百名山よりも金剛山、妙香山、七宝山、漢拏山に登りたい」。

 こう話す全さんの輝くような笑顔が印象的だった。(千貴裕記者)

日本語版TOPページ