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昨年の「9.11事件」から10カ月。現場では遺体捜索に終止符が打たれた。現在のところ身元確認は4割の1200人で、最終的には約2000人あまりの身元が確認されそうだという。ブルームバーグ・ニューヨーク市長は、「2800人の犠牲者を忘れない。彼らが落命したこの地は、世界で最も美しい」と語りかけたと、日本の新聞などは伝えている
▼死者を悼む気持ちは十分わかる。ましてや、テロによって突然愛する人々を失った遺族の哀しみは想像に難くない。しかし、「世界で最も美しい」という市長の言葉がどうにもひっかかる。世界は米国を中心に回っていると言わんばかりに感じられるからだ ▼6月30日、米軍の爆撃で罪もないアフガニスタンの住民が多数亡くなった。これとて、亡くなった人々、そして遺族にとっては「テロにあったも同然」だろう。だとすれば、爆心地は「世界で最も美しい場所」になるのか ▼ブッシュ米大統領は、米国をテロから守るための国家戦略を発表した。アメリカをいかにテロから守るかがその中心内容。国土安全保障省なる部署も新たに設けられるという。しかし、その前に考えてほしい。1番大切なのは、テロから自国だけを守ることではなく、テロの原因を世界中から根絶することだ ▼貧困、飢餓、経済格差の拡大。それらによってもたらされる様々な犯罪や病気のまん延。これらがテロを生む土壌になっていることはもはや世界中の人が知っている。だからこそ、こうした原因を少しでもなくしていくことこそが、米国に、世界に求められている。(聖) |