私たちのうた

李芳世


パダ

 子供が生まれた
 名前をなんと付けたのかと尋ねたら
 パダだと答えた
 故郷済州島の海
 いつかその海を目指したい
 穏やかで澄んだ海を見たい
 漁師だったハラボジ
 海女だったハルモニ
 ゆりかごのような懐に包まれて
 心躍らせ戯れたい
 どこまでもどこまでも続いている
 ひとつの海を忘れないでほしい
 そんな願いを託したという…
 ぼくらは波になった
 しぶきをあげ ぶつかり 激しくうねる
 パダになった

李芳世詩集「こどもになったハンメ」収録

 (日本児童文学7、8月号は、李芳世に贈られた三越左千夫少年詩賞特別賞の選考理由について次のように言及した。「父・母・祖父・祖母そして同胞への熱い愛に満ちている。童話・小説では在日朝鮮人の執筆活動は見受けられるが、少年少女詩集としては得難い成果である。その意義を認め特別賞を贈る」。)

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