ウリ民族の姓氏−その由来と現在(81)
民族的主体性確立の第1歩
執筆を終えて
朴春日
当初は、4カ月ほどの「旅」という予定で出立したのだが、なんと延々1年近い「長旅」になってしまった。思えば遠くへ来たもんだ、の感が強い。
何故そうなったのかといえば、それはひとえに、読者のみなさんが私のつたない一文を愛読してくださり、望外のご好評とごべんたつを寄せてくださったからである。 「はじめて自分の姓氏の由来を知って感激した」「祖国の歴史の勉強にもなるのでスクラップしている」「早く本にしてほしい」などという声から、「〇姓はいつ出るのか」「他姓にくらべ、自分の姓氏の文章は短くないか」などなど、じつに多くのご感想やご意見をいただいた。 うれしかったのは、ご自分の家に伝わる「朝鮮氏族統譜」(尹昌鉉編)のコピーを見せてくださった東京・足立の同胞商工人がいたことである。 原本は虫が喰って、かなり痛んでいるようだが、同書は南北朝鮮の学者が利用する古い族譜史料で、もはや入手できないものだけに、たいへん参考になった。 今回の連載は、共和国の歴史学者・゙喜勝氏の「朝鮮姓氏の由来」を基礎資料として、内外の多くの史書や文献類を参考にしたが、学ぶところもまた多かった。 主なものを列挙すると、「朝鮮全史」「三国史記」「三国遺事」「朝鮮王朝実録」をはじめ、「古事記」「日本書紀」「続日本紀」「新撰姓氏録」「万葉集」など。そして「中国姓氏考」(王泉根)・「姓氏の歴史と謎」(丹羽基二)・「世界の姓氏」(島村修治)などである。 欧米では「名称学」が確立され、地名・人名・学名・通俗名などについて、その語源・起源・名義の適用に関する研究が盛んだという。もちろん、その中心は人名学と地名学で、「国際名称科学会議」では多くの論議が交わされているらしい。 わが国の人名学については、寡聞にしてか、その実情がはっきり伝わらないが、研究自体は南北ともに進んでいるようである。成果を期待したい。 いうまでもなく、自分の姓氏のルーツを知ることは、民族的な主体性を確立するうえでの第1歩となる。とくにそれは在日同胞にとって、己の運命を左右する重大事といっても過言ではない。 なぜなら同胞たちの足元には、つねに日本権力層の 差別と同化の波 が押し寄せているからである。 その意味で、今回の連載が何らかの示唆を与えたとすれば、筆者の任は半ば達せられたといってよいだろう。 むろん過不足点や省略・割愛も多かったし、本貫の地図やルビなどもつけたかったが、紙数が許さなかった。また言及できなかった姓氏の人にはご理解を仰ぎ、後日を期していただきたい。 最後に、連載上、何かと手数をかけた編集部と担当記者に厚くお礼を申し上げたい。 |