NHK「女性国際戦犯法廷」番組改ざん提訴から1年

日本軍性奴隷制否認、黙殺するメディアの暴力

アジアの報道と比較 東京で報告集会


 2000年12月、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」が東京で開かれ、昨年、ハーグで最終判決が下された。両法廷では多数の証言・証拠に基づいて、世界的に著名な法律家たちにより「昭和天皇有罪、日本に国家責任」という歴史的な判決が下された。

 「女性国際戦犯法廷」(以下女性法廷)の開廷にあたって、中心的な役割を果たしたのが「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)。昨年初、NHKがETV特集としてこの「女性法廷」を記録する番組の制作を企画したが、番組放送中止を要求する右翼団体の圧力によって、番組内容は大幅に改ざんされた。これに対してVAWW―NETジャパンは昨年7月、東京地裁に、NHKおよび製作会社NHKエンタープライズ、ドキュメンタリー・ジャパンを相手取り、損害請求賠償裁判を起こした。

 提訴から1周年を記念して10日、東京・新宿区の早稲田大学国際会議場で、第6回裁判報告集会「アジアのテレビ報道に見る『女性国際戦犯法廷』―各国の番組ビデオを上映して検証―」が催された。

 原告のVAWW―NETジャパン代表・松井やよりさんは、あいさつの中で「女性法廷」の意味と今後の課題について触れながら、この裁判は今日日本のメディアが「女性法廷」を無視、黙殺、歪曲、矮小化するといった、ある種の「暴力」を振るっていることに抗議するものだと強調した。そして国家がメディアへの介入を強めている中で、メディアがそれに対し毅然として抵抗するのではなく、自主規制の形で権力に取り込まれていると指摘。さらに今回この「女性法廷」の番組改ざんは右翼の嫌がらせに始まるものだが、こうした動きに対して沈黙せず闘うことの意義と公正な裁判、法律のあり方を、人権を守るうえで問い直し、世界のグローバルミリタリズム、軍事化の方向に対して非暴力、平和の主張を伝えていきたい、と力強く訴えた。

 また、弁護団長の飯田正剛弁護士は第6回裁判報告で、裁判所が9月4日の第7回弁論でNHKのETV番組とVAWW―NETジャパンの「沈黙の歴史を破って」のビデオを検証することになったことを伝え、改ざんの違法性を証明するためにも、そのギャップを露にするビデオ検証を行うことは、良いアイデアだと話した。

 続けて集会では、この「法廷」を報じたアジアの国々の番組をビデオテープで検証した。上映された報道番組は、フィリピンの「I―Witness(アイ・ウィットネス)『バハイ・ナ・プラ(赤い家)』」と、南朝鮮の「終わらない法廷―2000年日本軍性奴隷制を裁く『女性国際戦犯法廷』の記録」。両作品の上映は、「女性法廷」のフルネームも、主催者も、起訴内容も、判決も全く紹介せず、「女性法廷」を評価する解説者のコメントを削除し、逆に「慰安婦」制度は売春で彼女たちの証言には根拠がない、などと証人と証拠を否認、湮滅する右翼学者のコメントを長々と流した、NHKの異様な番組編集をさらに浮き彫りにするものとなった。(金潤順記者)

女性国際戦犯法廷の全記録[T]

 本書は、2000年12月、東京で開かれた「日本軍性奴隷制を裁く2000年女性国際戦犯法廷」の4日間の記録である。

 南北朝鮮、中国、フィリピン、台湾、マレーシア、オランダ、インドネシア、東ティモールの9つの国や地域から来廷した、60人を超す被害者(サバイバー)たちによって、日本軍によるすさまじい性暴力被害の実態が次々と明らかにされた。最終日、4人の判事たちにより「沈黙の歴史を破って」と題された認定の概要が読み上げられた。それは、サバイバーたちの声が法の下へ届いた初めての瞬間だった。

 本書には、女性国際戦犯法廷の背景と目的、構成メンバー、被害証言者と略歴をはじめ、4日間の「法廷」の模様が克明に記されている。

 また、「ジェンダー視点に立つ民衆法廷としての女性国際戦犯法廷」ほか、「法廷」のもつ重要な論点を検討する5つの論文も掲載されている。(※問い合わせ先=TEL 03・3812・9420)。

日本語版TOPページ