取材ノート

「歌」という手段


 大阪で20日行われた民族教育チャリティーコンサート「ひとつのハーモニー」を取材しながら、思うところが多かった。

 大阪の同胞たちが創作した歌や統一への思いを謳った詩など、どれも生活に根づいた内容で、出演者たちの思いが十分伝わってきた。なかでも感動したのが、1世のハラボジ、ハルモニたちと初中級学校の生徒らが、一緒に朝鮮の歌を歌った演目。

 1世たちは「黄金コーラス」のメンバーで、週1回生野西支部に集まり、常日頃から練習を重ねているそうだ。その自信もあるせいか、舞台ではとても晴れやかな表情で歌っていた。また、子供たちと手を取りあって歌う姿は、観客の喝采と涙を誘っていた。

 核家族化が進む昨今、子供たちにとって1世と触れあうことはそう簡単なことではない。もちろん慰労訪問などでそうした機会はあるが、今回のように本番までに幾度も練習を重ね、親ぼくを深められる機会はそうそうないだろう。

 1世から4、5世までのすべての世代が、心を1つにして民族をアピールする。コンサートの名称にもなっている「ひとつのハーモニー」が、舞台の上で織りなされていた。

 「若い世代の民族性が希薄になりつつあるとよく言われるが、決してそんな事はないし、こんなにがんばっているんだということを見せたかった」。あるコンサート関係者は言った。

 彼の言葉どおり華やかなチョゴリに身を包み、朝鮮の歌を堂々と歌い、演奏する若い世代の出演者の姿は、「民族性が希薄になった」ことを微塵も感じさせなかった。

 いくら歳が離れていても、みんなが知っている歌ならすぐに歌える。いっしょに歌を歌えば心も1つになる。

 民族性を守り抜くことがもっとも大事なこの時に、「歌」という強力な手段があるということをあらためて感じた。(松)

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