春・夏・秋・冬

 第2次世界大戦中、日本は中国東北部などで細菌兵器の開発・実験を行い、実際に兵器としても使った。その開発に当たったのが、かの悪名高き731部隊である。森村誠一氏の「悪魔の飽食」などによって、その蛮行ぶりが世に告発されたのは、ようやく70年代に入ってからのことだった

▼開発に際しては生体実験が当たり前のように行われたが、731部隊は中国人や朝鮮人をその対象とした。ペストやチフス菌がどのように人間の体をむしばんでいくのか、誤って感染した場合の治療薬研究など、天に唾する生体実験は、ナチスドイツのユダヤ人虐殺にも匹敵する反人道行為だった

▼敗戦が濃厚になるや、蛮行が明るみに出るのを恐れた731部隊は、施設などを跡形もなくほとんど破壊、同時に実験用に捕らえていた人々らも殺害し逃亡した。秘密の保持を図ったのである

▼敗戦後、ソ連軍に捕らえられた部隊関係者の裁判を通じ蛮行のほんの一部は明らかにされたが、大部分は闇の中に葬り去られてしまった。というのも、米軍がその「成果」を独占するために、全面協力することを条件にしてその罪を免責、米本土に連行して研究、開発を続行させたからである

▼この蛮行の全容を、日本人自らの手で明白にしようと、静岡県在住の森正孝氏らのグループはたびたび中国現地に足を運び、証言の収集などを行い冊子にまとめて各地で報告会などを開いてきた。中国での活動に一区切りをつけた森氏らは、「次は朝鮮半島」だと口にしてきた。今回その訪朝が実現した。活動に期待したい。(彦)

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