若きアーティストたち−6

タレントユニット「ちんぐぅ」 李英美さん

人がやったこともないことを手がけてみたい


 東京都足立区在住の李英美さん(20)は、タレントユニット「ちんぐぅ」の片方として、ライブにテレビにイベントにと奮闘中。もとは歌手志望で養成スクールに通ったが、そこで親しくなった太田麻琴さん(21)と、ひょんなことからユニットを組むことに。

 在日コリアンの李さんと、日本人の太田さん。ユニット名の「ちんぐぅ」は朝鮮語で言う「チング」で、漢字で書くと「親旧」、友達という意味を持っている。

 歌手志望の李さんと、役者志望の太田さんには、「電波に乗って知名度を上げたい!」という共通の想いと、でも「性」を売り物にするのは絶対嫌、といった強い想いがある。「知名度を上げるため、業界では女の子の場合、グラビアを撮るのが手っ取り早い」。でも、それを知りつつあえてその道を選ばなかったのは、夢の実現に向けた地道な努力の積み重ねこそが実を結ぶと信じるからである。人前に立ち、しゃべり、人の心をとらえる。そのためには観客を笑わせ、自身を強く印象づける必要がある。「ちんぐぅ」は司会やリポート、漫才といった仕事をしながら、地歩を固めている。

 「女を下げ、人間を下げることだけはやりたくない」。それが2人の約束事だ。

 お笑い界にはこんなジンクスがあるという。ユニット名に「ン」と「濁音」が入ると売れるのだとか。ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ナインティナインがまさしくそれ。2人の場合もそれを意識したという。「やっぱ、『ン』入れたいよねぇ…」「何かないかなぁ?」「ねえ、友達ってなんて言うの?」「トンムか、チング?」「チング? 『ン』も『濁音』もあるやん! 決まりっ」となった。今年2月の結成以来、「ちんぐぅ」は、朝鮮人(李)と日本人(太田)、OL(李)と大学生(太田)、東京(李)と大阪(太田)、茶髪のネーチャン(李)と黒髪のオバチャン(太田)、天然(李)としゃべり(太田)…といった「違い」を「売り」に張り切っている。

 「内心、歌手という夢の実現のため、ボイトレ(ボイストレーニング)にも行きたい。けど、お金がないんです〜」と、李さんは笑う。彼女の父親は、知る人ぞ知る金剛山歌劇団の人気歌手、李栄守さんである。共和国功勲俳優でもある父親の影響を受けたという李さんは、「家ではアボジの指導を受けて歌の練習をする」ことも多い。「小さい頃からアボジの公演はいつも見に行ってました。祖国の歌を歌うのも、在日の心を歌うのも、どちらも胸に響いて心地よい」。

 彼女の夢は、朝鮮語と日本語をランダムに組み合わせた、新しいスタイルの歌を作って歌うこと。それにラップや演歌のリズム、旋律なんかも取り入れたい。とにかく人がやったこともないようなことを手がけてみたい。「世界は今、どんどん動いている。東京朝高の舞踊部がアメリカに行ったり、金剛山歌劇団がソウルで公演したり、少し前まで考えられなかったことが現実になりつつある。これから先、やりたいことはいっぱいある。そんなことに一つひとつチャレンジしたい」と李さんは言った。(金潤順記者)

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