守りたい、受け継ぎたい民族性
民族サラン!
留学同フェスティバル in OSAKA
300人による創作劇と文化公演 「我らはアリラン学生」
日本の大学、短大、専門学校に通う全国の同胞学生300人が出演した創作劇と文化公演「我らはアリラン学生」が3日、大阪・森ノ宮ピロティーホールで行われた。「こんなに感動したのは久しぶり」「忘れかけていたものを取り戻したような気持ち」――公演終了後のロビーでは訪れた同胞、日本市民約800人の熱気冷めやらぬ感想が聞かれた。彼らが伝えたかったものは。(社会・生活欄に関連記事)
学び、生きる意味問う
「アリラン」をテーマにした今公演は、「1、2世が託してくれた愛族愛国の伝統を変わりなく継承し、7000万朝鮮民族と同胞社会のさらなる発展の実現を広くアピールしよう」(同実行委)と企画されたもの。2章からなる創作劇と、民族色あふれる歌や踊り、楽器演奏の2部構成で行われた。 オープニングを飾った留学同京都の「祖国のない留学生」は、朝鮮を代表する科学者で合成繊維の発明に力を注いだ、李升基博士の半生を描いた物語だ。日本の植民地時代、べっ視と差別を受けながらも民族、祖国のために研究を続けた李博士の生き様は、現代に生きる在日朝鮮人にも「学ぶ意味」「生きる意味」を考えさせられるものとなった。 奈良県から訪れた李任子さん(60)は、「差別のなかで日本の学校を卒業し、成人学校でウリマルを習った昔のことがよみがえって涙が止まらなかった。同胞青年が民族性を守ろうとしている姿に触れ、安心した」と目をうるませていた。 第2章は、その演劇に連動する形で舞台を50年後の現代に置き換えた、東京の「我らはアリラン学生」。1世の民族性を受け継ぎ、民族性の象徴でもあるウリマルの重要性を訴えた、笑いあり、涙ありの作品だ。李成輝さん(30)は、「日常生活のなかで民族について深く考えるわけでもなく、厳しい現実ばかり追い求めがちだったが、民族の誇りを持って生きて行くことの重要性を再認識させられた」と感想を述べた。 これからも代継ぎ 全6章で構成された第2部の文化公演は、植民地時代から祖国解放、祖国統一への未来像を朝鮮の歌や踊り、楽器演奏などでつづったものだ。大阪の合唱と埼玉の舞踊「アリラン」、西東京の農楽舞「光復の喜び」、中四国の重唱「われらの誇り限りない」、東海のサムルノリ、九州のタルチュムなどが披露された。
なかでも好評だったのは、兵庫の重唱「イジェヌン ハナ(これからはひとつ)」。「我らの願い」や「パンガプスムニダ」など、朝鮮の歌をメドレー調にアレンジ、そこに統一への思いを込めたラップを織り交ぜたものだ。バックに映し出された北南首脳の出会いやシドニーオリンピックでの北南選手団の共同行進など統一を象徴する映像も効果的で、「若者らしい試みだし、見ていて楽しかった。年配の方も喜んでいた」(金明美さん、23)「時代に合わせてスタイルが変化しながらも、変わりない民族性がこれからも続いていくのだと感じた」(金ミファさん、22)などの感想が聞かれた。 また、京都のプンムルノリでは、勢い余ってキンサンモのひもが客席に飛んでいくハプニングも。それでも演技を続けた洪鉉基さん(帝京大4年生)に観客からは声援が飛んだ。また、東京の姜亜美さん(洗足学園大2年生)の独唱「祖国の愛は温かく」も好評だった。 日本学校出身の李正圭さん(文教大4年生)が留学同と出会い、朝鮮人として生きて行くことを宣言した語りは観客の涙を誘った。 フィナーレでは、出演者全員が舞台に上り、代を継いで民族性を守っていこうとの願いを込めて、昨年のフェスティバルで作られた曲「心をひとつに合わせ、胸を張って進もう」の歌を合唱した。 兵庫県から来たある同胞女性は(44)は、「日本学校に通った息子が民族楽器を叩く姿を見て、言葉も出ないほど感動している。民族性を与えてくれた留学同と全国の仲間に感謝したい」と語っていた。 守りたい、伝えていきたい民族性。彼らの思いは確実に訪れた人々に伝わっていたようだった。 ◇ ◇ 一方、4日には「留学同アリラン祭り」が大阪・東成区の中大阪朝鮮初中で行われた。参加者は晴天のなか、運動会、焼肉パーティーなどを楽しみながら交流を深めた。 |