私たちのうた

申東昊


猛暑

 どれだけ泣けば気が済むのかと嘆いたあの夏
 君は猛暑の中を歩いていった
 熱さに耐え切れず、歴史を遠ざけたあの夏
 燃え盛る太陽の下を歩いていった
 君が行く前に
 冷たい水一杯差し出せなかった僕ら
 分断の歴史を責めることもなく
 君は独りで猛暑の中を歩いていった

 誰が知りえたであろう
 僕らはみんな体に張りついた壁さえ忘れ
 愛しさに背を向け、その壁さえも忘れてしまっ  た歳月
 その壁を破り蝶のように祖国の果てまで飛んで  みたかったあの夢
 短い髪をなびかせながら越えていった
 あの夏の風とともに蘇らんことを
 誰が知りえたであろう (中略)

 あの年の夏も手のひらに怪我をしたらしい
 金剛山で、ピョンヤンで、猛暑の中で
 また再び君の手を握り、壁がないことを知らさ  れた
 君と共に分断の歴史を受け止め
 壁が崩れたその場所に
 希望の花、一輪ずつ咲かせた
 そうだ、君が歩いていった焼けつく道すら今は  美しい
 木の葉を浮かべるやさしい心で
 君と僕、一杯の水を酌みかわそう

 シン・ドンホ 1965年、江原道ファチョン生まれ。江原日報文芸当選。詩集「冬の京春線」「夕暮れ時」、雑誌「民族21」編集委員。現在漢陽大学国文科博士課程在学中。

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