実質的な変化の兆し

平壌での初の朝・日赤十字会談


 【平壌発=金志永記者】7月末、ブルネイで行われたARF(東南アジア諸国連合地域フォーラム)に参加した朝鮮の白南淳外相が、川口順子外相と会談を行ったことを機に、朝・日関係に実質的な変化の兆しが見え始めている。18、19の両日、平壌で行われた朝・日赤十字会談で双方は、行方不明者に対する調査結果をはじめて相互通報した。

「真しな努力伝える」

 会談関係者によると、双方は両国関係の改善に寄与する方向で論議と協調を進めていくことで意見の一致を見たという。

 19日、4項目からなる共同報道文を採択するための会談で、東浦洋日本赤十字社代表団団長は、今回の会談で実を結べるよう朝鮮側が傾けた努力に謝意を表しながら、次のように話した。

 「私たち赤十字代表だけでなく、記者たちに対しても色々と配慮してくれたことに感謝する。会談中もいい雰囲気を作るという言葉が何度も出たが、私たちがどんなに真しに、かつ友好的に問題解決のために努力しているかを日本の国民に必ず伝える」

 日本国内でこれまで、「拉致問題」の解決が朝・日関係正常化の前提条件のように世論が誘導されてきたことで、両国赤十字団体は懸案問題解決のための実質的な対策を議論することができなかった。会談を行っても、双方が依頼した行方不明者調査うんぬんの次元で議論が空転した。

 朝鮮赤十字会のある関係者はこれと関連し、「以前は調査を強化する状況にはなかった。行方不明者問題は双方の関心事であり、私たちも相手側に調査を依頼した問題だ。日本側が一方的に要求する問題ではない」と話していた。

リスト作成し調査活動

 状況変化の主なきっかけになったのは、朝・日外相会談だった。会談後発表された共同報道文は、関係改善と国交正常化を「可能な限り早く実現」すべき課題と明記し、そのために人道主義的な懸案問題の解決に誠意を持って対処するとの双方の意志を明らかにした。

 朝・日が共通の目標を改めて確認した意義は大きい。これにより赤十字会談の位置が定まり、懸案問題についての議論が順調に進んだ。

 赤十字会談が平壌で行われるのは今回が初めて。日本代表団は滞在期間、朝鮮赤十字会の依頼により調査活動を行っている人民保安省住所案内所副所長や、平壌市人民委員会住民行政局局長らと会い調査過程の説明を聞いた。

 朝鮮赤十字会は4月の北京での赤十字会談以後、5月中旬に赤十字会中央委員会常務会議を開き、日本側が提起した行方不明者のリストを400部作成し、道、市、郡の各赤十字団体や人民保安省、行政機関と社会団体に配布した。

 その結果、今会談では日本側が提起した行方不明者のうち6人の身元を確認し、日本側に知らせた。一方、日本側からも1945年以前の朝鮮人行方不明者の調査結果として3人の身元を確認、朝鮮側に通報した。

協調的雰囲気の維持を

 日本の一部メディアは、朝鮮側の「誠意ある努力」の背景には「国内の深刻な経済危機」があり、「微笑外交」の目的は「コメ支援」にあると報道している。しかし今回の赤十字会談では、コメ支援など経済関連の論議は一切なかった。

 会談後、朝鮮の関係者は日本メディアのこうした報道内容を念頭に置きながら、「そのような論議は当初から考えたこともない」と言明した。

 朝・日関係について言えば、過去2年間国交正常化のための政府間交渉は中断されたままだが、一連の非公式接触は続けられてきた。その過程に関係改善のための共通認識が生まれ、外相会談を契機にその内容が公表されたと考えるのが妥当と言えよう。

 現時点では、国交正常化を「可能な限り早く実現」するとの見解で、双方の外相が一致した事実を重視する必要がある。何よりも、政府関係者がその重大性を認識しなければならない。

 19日に発表された朝・日赤十字会談に関する共同報道文は、「会談は真しで協調的な雰囲気の中で行われた」と指摘した。共通の目標を達成するためには、こうした基調が今後行われる会談でも維持されるようにしなければならない。

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