新世紀商工会創造運動(2002.7.1〜2003.3.31)
9地域に再編、機能充実へ
大阪府商工会
商工連合会が提起した「新世紀商工会創造運動」が展開される中、大阪府商工会では同胞商工人らの民族性を守り、同胞経済・生活圏を形成、大きく発展させるため、府下24の地域商工会と4つの経理室を9つの地域商工会として再編する。6月25日から各商工会の設立総会が開かれ、8月1日を機に順次、営業を開始。すでに8つの地域商工会が出帆した。新生商工会は、「法人と個人の決算(税務)、各種融資と保険、経営アドバイスをはじめ『起業』から『相続』に至るまで、総合的で専門的な機能を果たすことを目指している」(府商工会の呉政輝理事長)。
3000人対象にアンケート 商工会では税金問題を中心にこれまでも同胞らの企業権、生活権を守る活動をしてきたが、商工人らの要求に対処する「問題受身型の組織」に少なからず陥っていた。しかし、今回の再編を機に、商工人の悩みを事前にキャッチして解決し、商工人に問題を提案できる「問題提案型の組織」「情報発信型の組織」にしていくという。そのために人と組織、事業方法を転換していく。 こうした組織の再構築、改革を推し進めるきっかけになったのは、98年、約3000人の会員を対象に実施したアンケート調査の結果。バブル崩壊後、日本経済の不況、金融不安などによって、ここ十年間少なからぬ同胞企業が倒産、廃業に追い込まれた。また朝銀の破たんから小口の融資すら受けられない状況に追い込まれた。厳しい現状は今も変わらない。 アンケートの結果、商工人が抱える悩みは、@受注確保A資金繰りB人材難C経理事務D税金の問題の順で多く、回答者の多くが景気動向に関するセミナーの開催、同業者ネットワークの構築を望んでいた。 一方、商工会に対する要求としては、人材育成、資金調達、企業診断、経営指導、事業継承、記帳指導など、かつてとは違い多様化している傾向も表れた。 また、会員の中にはグループ法人も多く、とくに3世をはじめとする若い商工人らは、国際化・グローバル化の流れに乗った企業経営を模索し、新しいビジネスチャンスをつかもうとしており、そのための経理、経営、財務といった総合的な経営支援も求めていた。 こうした商工人らの現状と要求に応えるため、府商工会では組織の再構築を検討。同胞商工人らの実利追求、そのための専門知識を有する人材の育成、組織の改革と強化を目的とした3つの研究委員会を設置し、その準備を進めてきた。 府商工会の金原賛総務部長は、「商工人らの要求を的確に把握し、積極的に情報を提供していく。そして、現実問題として倒産・破産に追い込まれた同胞らにも新たなチャンスを与え、新たな大阪の同胞経済・生活圏を築いていく。人材育成など課題は山ほどあり、まだスタート地点に過ぎないが、役員と職員が一丸となり目標に向って走っていきたい」と言う。 役員の世代交代も 大阪同胞らの大きな期待を背負って出発した新生商工会。「いくつかが1つになれば、さらに大きな1つ、大きな力になる。初代会長をはじめ役員らも意欲満々」(呉理事長)という。 これまで職員が1人のところもあったが、今回の再編により職員の数は最低8人に拡大。部長在籍の総務・商工・経営経理部が設けられるようになった。 さらに商工人参加型の業種別部会を設けて同・異業種交流会やビジネススクールをはじめとする各種セミナー、簿記、パソコンなどの教室を運営し、商工人らの実利も追求していく。 セミナーは「次代塾」と題し、府青商会ととともに8月21日から9月末まで6回にわたって、「よくわかる創業の基礎」「ビジネスプランの作成」「新規創業時の資金繰りと助成金活用法」「知らないと損する会社の知識」「金融機関活用法」「在日コリアンの企業経営」をテーマに創業支援連続セミナーを開催する。 また各商工会では、前役員らを基本的に役員に登用。会長をはじめ世代別に顧問、副会長、副理事長、理事らを選出し、世代交代も推進した。一方、これまで築き上げてきた地域同胞社会の運動を引き続き活性化させるため、地域役員協議会(仮称)も設ける。また青年・婦人部(仮称)を設け、若い青年商工人、女性商工人らの親ぼくも深めていく予定だ。 「職人の街」「つくれないものはない」とも呼ばれる東大阪市を活動区域とする東大阪商工会。会員の半数近くがプラスチック、ゴム、金属加工などの中小生産業者だ。 朴栄洙理事長は「職員の数も増え、専門部署を設けることができた。これによって1人の商工人に対しより多くのことを専門的、総合的にアドバイスできるシステムが設けられた。商工人らの実態、要求を1つでも多く把握し、商工人のかゆい所にも手が届くような商工会に発展させていきたい」と語る。金憲二会長は「すべての活動を常任理事が中心になって行い、これまで同様、全力を尽くしていきたい」と意欲を燃やしていた。 |