回重ね広がる輪
ムジゲ交流会フェスタin北海道
「ムジゲ会会員同士の交流を図ると同時に、各地でムジゲ会の姿を見てもらうことで同胞障害者家族たちに勇気と輪に入るきっかけを与えたい」(申桃順ムジゲ会会長)――。同胞障害者家族のネットワーク「ムジゲ会」の交流会が23〜25日に北海道で行われ、ムジゲ会会員23家族、68人が参加した。北海道朝鮮初中高級学校で同校生徒、同胞ら約200人に迎えられたムジゲ会の会員たちは、学生たちが準備した文化公演や運動会、焼肉などを楽しみながら交流を深めた。また小樽、ノーザンホースパーク(牧場公園)などの観光、父母懇談会など盛りだくさんの2泊3日を過ごした。
東京、大阪に続き3度目
新千歳空港には羽田、福岡、伊丹、名古屋、広島、松本空港から次々にムジゲ会会員たちが到着。抱き合って再会を喜ぶ姿が見られた。肢体不自由の障害を持つ李竜禎くん(6)の母、李貴美さん(42・山口)は、「みんなとは大阪で行われた前回の交流会以来、2年ぶりの再会なのでとてもうれしい。何よりも子どもたちが成長した姿をみると感慨深いですね」と感無量の様子。 交流会は2年に1回、情報交換や互いの悩みを話し合う場として設けられてきた。今回は4年前の東京、2年前の大阪に続き3度目。東京で初めて発足したムジゲ会は徐々に広がりをみせ、現在は兵庫、愛知、下関など日本各地8カ所に設けられている。それと共に会員数も増え、今回はこれまでで最多の参加人数となった。 70万人に1人の難病コルネリア・デ・ランゲ症候群の姜仁愛ちゃん(10)の母、崔玉貴さん(40・山口)は、「回を重ねるごとに輪が広がっているのを実感する。人数が多くなればその分いろいろな悩みも出るし、答えもいろいろ出てくる。2年に1回という貴重な機会だからたくさん話し合いたい」と語った。2日間にかけて行われた父母懇談会では、子どもの教育問題や福祉問題、ムジゲ会の今後のあり方など、さまざまな問題について夜更けまで討議し合った。 何かが変わった3日間
「『お兄さんが障害をもっているために友達を家に連れてこられない』と14歳の娘に言われたとき、障害を持った息子に目を向けがちで、健常者の子どもの気持ちをケアできていないことに気がついた」。息子の沈知世さん(19)が離治性てんかんレノックス症候群の障害を持つ沈照泰さん(53・大阪)は、父母懇談会で悩みを語った。 沈さんが全国的な交流会に参加したのは初めて。妻の楊鎮嬉さん(49)、知世さん、娘の由梨さん(14)を連れての参加である。知世さんが外でいろいろなことを体験でき、自分自身も障害児をもった親としての自覚を吸収できるのでは、というのが参加の動機。だが、今回思いがけない収穫を得た。由梨さんが「うちだけじゃなくどこの家族も大変なんやなあ」と理解を示したのだ。 朴用秀くん(8・頚直性四肢麻痺)の姉、朴京華さん(12・大阪)とホテルの部屋が隣になり、打ち解けたこともいい体験になったという。「自分と同じ境遇の子がいる、自分だけじゃないんだと感じたんでしょう。この3日間を通じて、家族のなかで何かが変わったような気がします」。 ボランティアと心交わし 今回北海道の同胞のなかからボランティアを募ったところ、定員オーバーが出るほどの希望者が出た。10、20代の男性から50代の女性まで、幅広い層が参加したのも特徴だ。オレンジ色のTシャツを着た31人のボランティアたちは2泊3日を朝から晩まで障害者と過ごした。 息子の金潤樹くん(15)が知的障害を持つ李竜子さん(49・千葉)は、「今回はじめてボランティアに任せて、ビールの1杯でも飲もうかなという気持ちになるくらいリラックスしました」と笑った。 2人の男性ボランティアと率直に話し合い、トイレや力仕事など女性ボランティアでは対処しきれない問題もカバーしてくれたことが安心感につながったという。今までなじみのない場面に直面すると声を上げて泣いていた潤樹くんだが、今回は声を出すだけで涙は出ないという 大きな発展 ぶりだった。 「いちばんの進歩は潤樹が第三者に心を開いたこと。親の安心感が子どもに伝わったのと同時に、やっぱり同胞同士だから通じ合えた部分が大きいでしょうね」 卞才学さん(朝鮮大学校教育学部1年・18)は蔡徳昇くん(15・自閉症)のボランティアを体験し、「一緒にいればいるほど、徳昇の言っていること、望んでいることを理解したいと思うようになった」と感想を語った。一緒にいるほどもっと知りたい、そう感じることが「交流を深める」ことにつながる。 ダウン症の車松鋳くん(4)を息子に持つ車源日さん(42・京都)は「ムジゲ会が在日同胞社会での福祉問題を成熟させる足がかりとなるなら、各地で交流会を持つことはとても大きな意義がある」と語った。(金雪滋記者) |