取材ノート

歴史わい曲とのたたかい


 旧日本軍の細菌戦部隊である731部隊。その研究資料が米国に渡ったのは周知の事実で、それをもとに米国は朝鮮戦争で細菌兵器を使用した。

 朝鮮戦争時の米軍による細菌戦の実態を調査するため、7月26日から8月5日にかけて朝鮮と中国東北部を訪れた「朝鮮戦争米軍細菌戦史実調査団」の団長を務めた森正孝さんから、話を聞く機会を得た。

 森さんは、731部隊に関する調査をはじめとする朝鮮、中国に対する日本の戦争・侵略史を研究してきた1人。「朝鮮戦争で細菌戦が行われたことは、日本にも重大な戦争責任がある。日本は戦中戦後にかけて、植民地支配や南北分断固定化の一翼を担うなど、朝鮮に対する責任を果たしていない」と、訪朝の動機について話した。

 今回の訪朝では、研究者と目撃者各2人と会い証言を聞くことができたそうだ。生々しい証言を聞きながら、森さんは細菌戦が行われたことをあらためて確信したという。

 「朝鮮の人たちはとても協力的だった。窓口となった朝鮮対外文化連絡協会がしっかりと準備をしてくれたので、調査を滞りなく行うことができた。今後も信頼関係を築き、より内容のある調査活動をしていきたい」と抱負を語った。

 朝鮮戦争時の細菌戦や731部隊について、米国と日本はその事実をいまだ認めようとしていない。それどころか、一部の日本マスコミは、「朝鮮戦争当時の細菌戦うんぬんは、北朝鮮や中国がでっち上げたもの」(産経新聞98年1月8日付)など、事実のわい曲に奔走している。

 「この活動は、米日の歴史偽造・わい曲とのたたかい」と森さんは言う。ここ数年、歴史わい曲勢力が台頭し、世論を「右」へと誘導しようとする動きが目立つなか、森さんのように良識を守るため、日々たたかっている人がいるということを知り勇気づけられた。(松)

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