「私たちはもう統一した」
北南統一サッカー、希望にわくソウル市民
2002年北南統一サッカー大会が行われた7日、ソウルは統一を願う南の同胞の熱気で沸き返った。市民たちは北と南がサッカーを通じてひとつになる姿に、統一への希望を膨らませていた。
台風被害の中で
試合開始30分前。家族を連れ、足早にワールドカップ競技場への坂道を登っていた朴ポンシクさん(40)は、「今日の競技は南北交流の場になるでしょう」と笑顔一杯だった。テレビでしか観たことのない北の選手たちをこの目で、と思い、競技場を訪れたという。息子のジュンサンくん(12)と娘のチギョンちゃん(10)は、試合結果を予想してくれた。「イーデーイー(2―2)!」。幼い心にも北と南、両方を想う気持ちが宿っているのだ。 南では8月末から台風が全域を襲い、各地で人的、物的被害が発生した。多くの人たちが肉親を失った悲しみ、明日への不安を抱えながら生活を送っている。間もなく秋夕(中秋)を迎えるが、この日もテレビでは豪雨と突風で先祖の墓を失った人々が慟哭する映像が何度も流れていた。京畿道の田舎から5時間かけて来たと言う李ギフン(84)、崔チョルグさん(66)は、「被害復旧のため、若者たちは来られないので老人だけで来ました」と呼吸を整えながら話してくれた。「北と南はもっと行き来しなければ。そうすれば統一も近くなる」。 具デフィ(31)、李ウンシル(28)夫妻も「離散家族の悲しみを考えると、明日にでも統一されなければ」と真剣な表情だった。 競技場近くの広場では大型スクリーンと野外舞台が設置され、イベントが行われていた。道行く青年らが次々と集まり、人だかりができている。 市民団体「6.15南北共同宣言実現と韓半島平和のための統一連帯」が主催した「2002南北統一サッカー競技応援の祭り」だった。スクリーンには6.15共同宣言を生んだ北南の首脳が握手を交わす姿が映し出された。舞台の前列には「ONE COREA! われらはひとつ」のロゴが書かれたTシャツを着た青年たちが統一旗を高く掲げ、歌い手に声援を送っていた。 統一連帯役員のカン・ヒョングさんは、「選手たちは祖国の和解と団合を遂げる代表だ」と期待を示した。そして「民族が抱える問題を民族の力で解決できる環境が整えば6.15共同宣言の実践も夢じゃない。外勢の干渉を受けず、民族が自らの運命を切り開く環境を作っていきたい」と熱く語った。 在日同胞も活躍 試合後、「アリラン」の伴奏が流れるなか、北南の選手たちが大型統一旗を高く掲げ、観客一人ひとりの声援に応えるかのように競技場を大きく1周した。6万4000人の観衆は総立ち。「南北統一」の歓声と拍手が競技場にこだまし、選手と観客はひとつになった。 後方の客席で選手を見守っていた金ドンチョルさん(40)は、「私たちはもう統一しました」と何度も繰り返し、朴チュヘさん(24)は、「多くの観客がひとつになって応援する姿に、必ず統一できると確信した」と語った。 日本から来た在日同胞観覧団(団長=金清・在日本朝鮮人蹴球協会会長)の48人も胸一杯だった。同協会の呉泰栄副会長(46)は、「12年ぶりの統一サッカーに感無量だ。紳士的で親善的なプレーに同じ民族同士が戦っているという実感があった」と語る。90年の統一サッカーに出場した在日朝鮮蹴球団の金鍾成選手に続き、今回は東京朝高出身の安英学さん(23、アルビレックス新潟)が北側代表としてピッチに立ったことが、その喜びをさらに膨らませてくれたと話していた。 「W杯優勝も夢じゃない」 北南関係者の声 李光根・北側代表団団長 肉親の情をもって温かい声援を送ってくれた南の市民、大会の成功に力を注いだ朴槿恵女史に感謝したい。 分断された祖国の統一を実現することは、切迫した課題だ。われわれが7.4共同声明を固守し、6.15共同宣言を徹底して履行する時、統一を近づけることができる。選手たちは、わが民族が新しい歴史をもっと早く創れるということを内外に広く知らしめてくれた。次は平壌で会いましょう。 朴槿恵・欧州アジア財団理事 競技場に鳴り響いた「統一祖国」の歓声、この歓声は皆の心に残り続けるだろう。毎年南北が互いに行き来し、統一サッカーが続けられるなら南北間の平和は定着し、共同発展の契機を創ることができる。統一も定着する。 ひとつになって熱心にプレーする選手たちの姿は、統一祖国の主役として歴史に記録されるだろう。 鄭夢準・大韓サッカー協会会長 試合が引き分けたので、ワールドカップで4強入りした南と北は互角だと思った。12年ぶりに開かれた統一サッカーの歴史的な意味を伝えていくため、綾羅島競技場(メーデー・スタジアム)で次の大会が開かれることを待ちわびている。 今年に入って北のナショナルチームは第33回キングスカップ(タイ)で優勝、女子サッカーチームは世界最強と言われる中国を破っている。南北が力を合わせればワールドカップ優勝も夢ではない。 李ジョンマン北側監督 90年には選手として、今回は監督としてソウルを訪れたが、南の市民らの熱狂的な応援に胸が熱くなった。66年のWカップで北が8強入りし、今回南が4強入りの快挙を遂げたように、わが民族はサッカーをこよなく愛し、才知に冨み、強い意志を持った民族だ。北と南が力を合わせるなら間違いなくもっと強いチームになれる。 今後を念頭に、選手団を若手で一新した。今後は、北南間の合意にそって国際試合にも積極的に出場するだろう。(8日の午さん会で、談) |