若きアーティストたち−7

兵庫朝鮮歌舞団 韓盛治さん

民族教育、支えた人の恩に報いたい


 8月31日、東京で開かれた第3回JAA国際アコーディオンコンクールに、東京、北関東、兵庫朝鮮歌舞団から4人の同胞アコーディオン奏者たちが参加した。兵庫朝鮮歌舞団の韓盛冶さん(23)は、今回はじめての出場。祖国統一への願いを込めて「統一列車」を演奏した。

 コンクール初日は、おりしも小泉首相の朝鮮訪問が報じられた翌日。観客たちは在日朝鮮人である韓さんの演奏に、よりいっそう深い関心を寄せていた。

 初級部のときからずっと民族教育を受けてきた韓さんだが、学生の頃は特に「組織」や「同胞社会」を意識したことはなかったという。朝高卒業後、担任の先生に勧められるままに兵庫朝鮮歌舞団に入団。声には自信があったものの、楽器はほとんど触った経験がなく「アコーディオンを渡されて、『ドレミを弾いてみろ』と言われたときにはどれが『ド』なのかが分からなかった」。

 新入団員だった頃、そんな彼にも「涙が流れる」くらい感動したできごとがあった。それはあるイベントで、チャンダンノリをする朝鮮学校生徒たちの姿。「小さな子供が民族のリズムに乗って、肩を揺らしていたんです。なぜか知らず知らずのうちに涙がこみ上げてきて…」。

 数々の同胞に触れあい、温かい笑顔に支えられて、日々仕事に励んできた。そして日を重ねるごとに、その微笑の陰にあるさまざまなドラマを知るようになってからは、以前関心を持てなかった「組織」や「同胞社会」を改めて見直すことができるようになったと韓さんは言う。

 「歌舞団に入らなければ気づかないことが多かった」。経済的な面で余裕がないと嘆くことはある。しかし、朝鮮学校に通う子供たちとは明らかに違う日本学校に通う同胞の子供たちを見ながら、韓さんは今自分にできることが何なのかを考えるという。

 「(自分にとって)当たり前と思っていたことが、当たり前じゃない人もいることを知った。僕らは僕らを朝鮮人として育ててくれた民族教育を、陰ながら支え続けてきた人たちがいることを知らなきゃいけない」。歌舞団の公演を、その人たちが喜んでくれている。韓さんにとって、それは大きな励みになる。

 今年の春から平壌で開かれたアリラン祝祭の際には、約70回にわたって歌舞団の公演が披露された。そのうち韓さんは30回出演。「最初はことばがどのくらい通じるのかとか、観客に僕のノリがウケるのかとか、色々心配も多かった」。しかし、持ち前の力強さと巧みな話術で観る者の心をしっかりゲット。平壌市民に「ハン・ソンチ」の名を印象づけた。

 初めてのコンクールでは「賞を取ることよりみんなにこの曲を聞いてもらいたかった」と、感情移入のしやすい朝鮮の曲を選んだ。日本人に馴染みの薄い「統一列車」。汽笛を鳴らしながら力強く走る統一列車の姿を韓さんは見事に表現した。結果は、一般の部3位入賞。「つぎは上級の部にチャレンジします。そのときも朝鮮の曲で挑みますよ」と、彼なりのこだわりを見せてくれた。(金潤順記者)

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