男性合唱サークル「サナイ」

初の単独コンサートに向けて練習


 夜空に力強い歌声が響きわたる。声の主は、昨年5月に大阪府下同胞男性で結成された合唱サークル、「サナイ」(朝鮮語で男子の意)のメンバーだ。「ひとつのハーモニー」公演で初舞台を踏み、その歌声を同胞らから絶賛された。現在、10月19日に行われる単独コンサートに向けて気合満々、練習に拍車をかけている。

「息の長い活動を」

 大阪朝鮮第4初級学校の教室には週2回、17歳から64歳まで、15人の「サナイ」が集う。彼らの職業は、キムチ屋、加工所、総聯職員、写真家、朝鮮学校のバス運転手、朝高生とさまざまだ。普段は接点のない彼らが、朝鮮の「歌」を通して交流を深め合っている。この日も、丹念な発声から曲合わせまで、途中5分ほどの休憩をはさみながらの練習が、2時間以上も続いた。

 「もっとお腹に力を入れて」「この部分、はっきり発音して」。指導するのは、崔太成さん(56)。大阪朝鮮歌舞団結成当時、歌手として活躍した、「サナイ」発起人だ。

 同団が結成されたのは、昨年5月5日。「同胞女性による歌唱サークルは全国各地で活発な活動を行っているが、こと男性となると、イベントのたびに結成される『にわか合唱団』ばかり。行事が終わると自然消滅してしまうのではなく、3、4世に受け継がれていくような息の長い活動をしていきたい」―。歌舞団から退いた後も、そんな思いを温めてきた崔さんら当時の歌舞団メンバーが中心となって結成された。

 「サナイ」団長、大阪朝鮮歌舞団後援会の文祥介会長(62)は、「すぐに賛成し、思いつく限りの歌好きの知り合いに片っ端から声をかけた。尻込みする同胞を『音痴はいない』という崔さんの自論を盾にして強引に誘った」と笑う。

鳴りやまぬアンコール

 職種も住んでいる場所もばらばらのメンバーが、決まった時間に顔を合わせるのは大変だ。しかし、「練習の日は残業をしなくてもすむように、朝6時に出勤することもある」というのは、靴の加工所を経営している韓貴星さん(55)。歌と触れ合うことで毎日の生活に張りも出た。「体脂肪が4キロも減って体も軽くなった。正に一石二鳥」と鄭政夫さん(61)は喜ぶ。「どんなことがあっても民族性を守っていかなければならない」と力説するのは、文友平さん(62)だ。「長い歴史を通じて受け継がれてきた朝鮮の歌を歌うことによって、民族への愛情がいっそう深まった。その素晴らしさを多くの在日同胞、日本の人々に伝えたい」。

 最初は9人からスタートしたメンバーも、今では15人に。レパートリーも徐々に増えた。「アリラン」はもちろん、「春の乙女」「懐かしい金剛山」「法聖浦の舟歌」など古くから歌い継がれてきた朝鮮の名曲が中心だ。少しでも分からないところがあれば、メンバーはすぐに崔さんの自宅に飛んでいく。何時であろうが、崔さんもまた熱心に指導する。

 そのように結成から1年2カ月が過ぎ、今年7月、「ひとつのハーモニー」公演(20日、大阪ドーンセンター)で初の舞台を踏んだ。単独での発表はなかったものの、結成から着実に積み重ねてきた技量が光る歌声に、観客席からはアンコールの声援が鳴り止まなかった。「『サナイ、ここにあり』をアピールした旗上げ公演となった」(梁用直さん、64)。

 メンバーは現在、来月19日に開催される、単独コンサートに向けて練習に余念がない。当日は日本の名曲も初披露する予定だ。「朝鮮の歌を通して、民族の心を代を継いで伝えたい」―それが彼らの共通した思いだ。(李明花記者)

 10月19日(土)、18時開場、18時30分開演、大阪ドーンセンター。入場料=一般2000円(前売1500円)、高校生以下800円。全席自由。賛助出演=文芸同大阪支部コーラスグループ「ソリ」、友情出演=李明玉、金桂仙、金主休(フルート)、高雪華、文陽子(ピアノ)問い合わせ=TEL 090・4292・2770、またはTEL 06・6716・2839。

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