くらしの周辺

「あなた自身が大切だから…」


 僕が生まれた1972年に、日本と中国は国交を正常化し、今年で30周年を迎える。70年代はじめにはわずか数千人だった相互往来は、昨年、日本から中国への訪問者数が238万人まで上昇し、さらに中国から日本への観光・就労・留学もこれを上回るという。また日中友好都市はすでに200組を超え、かつて満州を植民地化し、敵対関係にあった両国の関係は、30年の時を経ていろんな問題を抱えながらも間違いなく近づいている。

 歴史的な平壌宣言発表から1週間。

 朝・日首脳会談にいたるまでの経過や宣言文の内容を見れば見るほど、朝・日両国の未来、そして在日同胞の未来像を勝手に描き、期待に胸膨らむ。しかし、その反面、拉致被害者の安否情報を受けて、どこで調べたのかウリハッキョや総聯傘下団体に対する脅迫・嫌がらせ電話は数知れず、弱い者たちに対する暴言・暴力が続いてしまった。言い様の無いいら立ちにさいなまれていたとき、ある日本の友人からEメールが届いた。

 「民族学校に通う友よ。どうか希望を捨てず、自衛をしてほしい。何の解決にもならないが、いまは民族衣装を着ないでほしい、あなた自身が大切だから…」

 両国間で起こった出来事と在日同胞の過去・現在の状況を考えながら、国交がないということの意味を改めて噛みしめた。友人はメールにこうも付け加えた。

 「『着るな』と言うこと、本当に自分が情けなく悔しい。決して言いたくなかった言葉だが、塀の落書きは消えても心と体の傷は消えない。どうか理解して下さい」と。
(李紅培・朝青員)

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