〈総連中央元財政局長の裁判〉 不当な論告求刑、共謀の事実、立証されず |
2001年11月、検察当局が朝銀問題を口実に不当に拘束、起訴した総連中央の康永官元財政局長に対する論告求刑が12日、東京地方裁判所であった。検察当局は過去2年間の公判過程を通じて、容疑となった「業務上横領事件」と元局長とは何の関係がないことが明らかになったにもかかわらず、これを無視し、一方的に懲役7年を求刑した。弁護団側は26日、最終弁論を行う。また弁護団側は15日、司法当局が弁護団側の15回にわたる保釈請求を「罪証隠滅」「逃亡の恐れ」を口実にすべて却下し、元局長を2年以上にわたって拘束していることに対して、東京弁護士会と第2東京弁護士会に人権救済を申し立てた。一方、在日本朝鮮人人権協会は16日、柳光守会長談話を発表。論告求刑の不当性を訴えながら、司法当局に対し、無罪の判断を示し、元局長を保釈するよう求めた。 証人らが無関係断言
検察側は、康永官元局長が共謀して朝銀東京の預金を「横領」したと主張したが、共謀の事実は立証されなかった。 2年にわたる公判では、弁護側請求証人だけでなく、検察側請求証人までもがこの事件と元局長が全く無関係であると断言した。 また検察側は、今回の事件の重要な争点である「横領金」の入出金問題について、これが仮名口座を通じて行われたと主張するが、この仮名口座は当時の朝銀東京側が開設し、管理していたもので、元局長が当初からこの口座の存在すら知らなかったことも明らかになった。 弁護団の渡辺博弁護士は立証問題について、こう強調する。 「弁護側だけでなく、検察側の請求証人も、嘘偽りのないことを宣誓し、事件と元局長が無関係と証言した。にもかかわらず、検察側が自ら請求した証人の証言さえも否定するのは、どうにかして有罪判決を下させようとするもの。それには、朝鮮総連と朝鮮民主主義人民共和国に対する偏見が前提にある」 保釈請求翌日に却下 司法当局は今回、弁護団側の15回にわたる元局長の保釈請求をすべて却下した。とりわけ東京高裁は、東京地裁が今年4月から10月まで8回も保釈決定を行い、さらに保釈保証金も認めたがその判断を尊重せず、検察側の抗告に沿って請求をすべて却下した。とくに見逃せないのは10月に行った保釈請求で、請求翌日に却下した。「記録を検討したとは到底、思えない」(渡辺弁護士)。 高裁の主張は、「検察官および弁護人の立証が一応終了したとはいえ、罪証の隠滅を図る疑いが消失したとまではいえない」からだという(10月の却下理由)。 また、健康状態を考慮しても、被告人を釈放すべき特段の事情は認めがたい、ともいう。 前者は、立証が終わっているにもかかわらず、判決まで証拠を隠滅する可能性があるというもので、その可能性を拡大、その上にさらに拡大解釈を積み重ねたものだ。 後者についていえば、康元局長は持病の心臓病(解離性大動脈瘤)を有しており、現在も予断を許さない状況だ。また逮捕当時、右膝人口関節置換術後化濃性関節炎を患い、緊急手術を必要としている。弁護団側はこうした現状を踏まえて15日、東京弁護士会などに人権救済を申し立てた。 申立書は、被告人は無罪が推定されており、保釈の権利性は憲法が定めるもので保釈却下、長期拘束は違憲、違法な人権侵害、国際人権規約にも反すると指摘。康元局長の保釈を促した。 在日本朝鮮人人権協会の会長談話は、求刑の不当性について「弁護側だけでなく、検察側の証人さえも事件と元局長が無関係であると断言しており、検察側の求刑は事実無根の不当かつ不合理なものであるのは明らか」だと指摘した。 また保釈問題についても、「一般的に刑事裁判における被告人は検察側申請の証人尋問を含む主な証拠調べが終われば保釈が認められるのが通常」であり、司法当局が病状が重く「手術が必要な被告人を引き続き勾留する異例かつ異常な態度をとっているのは日本国憲法、刑事訴訟法や国際人権規約に照らしてみても不当極まりないものだ」と強調した。 総連中央元財政局長への論告求刑に対し在日本朝鮮人人権協会会長が談話発表 [朝鮮新報 2003.12.18] |