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大阪同胞ミュージカル「ミレ」上演、3300人が観覧

出演者に多くの花束が贈られた

 解放後、在日同胞が築き守ってきた民族教育の熱い歴史を振り返る「アイミュージカル・ミレ(未来)」が4、5の両日(3公演)、大阪市中央区の森ノ宮ピロティホールで日本語で上演され、南昇祐 総連中央副議長、宋昌徒総連大阪府本部委員長、橋本昇治、半田実大阪府議、金昌植民団大阪本部団長をはじめ活動家、同胞、各界の日本市民ら約3300人が観覧、大盛況となった。

 アイは朝鮮語の子供、日本語の愛、英語の私を意味する。出演したのは主人公ミレを演じた高秀花ちゃん(10)をはじめ朝鮮学校生徒37人を含む82人。 総連大阪府本部常任委員会が公演実行委員会を結成し企画。大阪府、大阪市、府・市教育委の後援を受けた。

 「ミレ」の舞台は1945年から48年。同胞らが日本人の協力を得ながら朝鮮学校を建て、日本政府の弾圧やさまざまな困難にもめげず、学校を守り通していく様子が描かれた。民族教育の未来を象徴する明るく闊達な女の子ミレ役を射止めた秀花ちゃんは東大阪初級部の4年生。「将来の夢は舞踊家」と屈託なく話す。連日5時間の猛稽古をこなしながら、根をあげずがんばり通した。「1世が託した民族の未来を象徴する子供」(作、演出=金智石氏)に相応しい華を感じさせ、舞台の成功に花を添えた。

 40曲に及ぶオリジナル曲を担当したのは新進のピアニスト尹英蘭さん(26)。朝鮮民謡トラジ、アリランから、ロック、ジャズ、フォークソング、ギター曲まで、さまざまな音楽の融合を試みて、多彩な人間群像を形象した。

連日、会場は満席となった

 舞台のため子どもたちは約3カ月、大人は2カ月の猛練習を続けた。練習、本番の舞台裏を大阪本部、支部の総連、女性同盟、教員などすべての活動家が物心両面から支えた。この過程での結束が、草創期の朝鮮学校を描いたミュージカルと重なり、舞台に熱気とエネルギーを注いだ。

 4日の公演を観覧した生野区に住む夫満寿さん(72)は、終始、ハンカチで涙を押さえていた。「この舞台は、私たちの歩みそのもの。民族の誇りと自覚を取り戻すために、学校建設に懸命になっていた当時の日々を思い出して涙を押さえきれなかった」「当時、生活は苦しかった。それでも、同胞たちは子供を朝鮮学校に入れ、屑拾いや日雇い、闇市、内職などをして集めた金を学校の運営に差し出した。学校と子供を自分の命のように大切にした」と話した。

 舞台では詩人許南麒さんの詩「子どもたちよ、これがウリハッキョなんだ」も歌われた。「雨の日には雨が雪の日には雪が/突然の嵐に窓は震え/ノートの文字が滲み/頬を伝うしずく/授業もできなくなるけれど/子どもたちよこれがウリハッキョなんだ…」。この詩のように「ウリハッキョへの深い愛」が「ミレ」全体を貫く。

 公演を見た尾辻かな子府議(28)は「何度も泣きそうになった。朝鮮学校を知らずに来たことは恥ずかしい。無知はもはや許されない。今も続く在日への差別の厳しさを思い、隣人がそれにひるまず明るくがんばっている姿に心を打たれた。彼らをまず知ること、彼らが大事に思っていることを私たちも大切にしなければ」と語った。

 長田公子同議員も「家の近所に在日同胞の人が暮らしていて、冠婚葬祭などで顔を合わすこともたびたび。日本社会の風当たりが強くなる中で、彼らが毅然として生きている姿にいつも尊敬の気持ちを持っていた。学校を支えるのは、私たちの問題でもある。日本人も胸襟を開いて、在日同胞社会と共生していかなければ」と語った。

 金奉亨大阪本部副委員長は「公演成功のために協力してくれたすべての出演者、各界同胞、日本のみなさんに心から謝意を表します。いま在日同胞社会は、世代交代の中にあり、複雑で困難な問題に直面していますが、私たちは強い気迫を持って、もう一度原点に帰り、1世同胞の気高い精神を引き継いで民族、祖国、在日同胞社会を守っていきます。本公演は、そのことをもう一度、私たちに再認識させてくれたと思います」と話していた。(朴日粉記者)

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〈朝鮮学校草創期描いたミュージカル「ミレ」〉 「蘇るあの日」の熱気とエネルギー

[朝鮮新報 2003.12.9]