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〈97年開設のNPO法人同胞法律・生活センター〉 新たにサポート部門設ける

 1997年12月に東京都台東区にて産声をあげた同胞法律・生活センター。誰もが遠慮、気後れすることなく安心して相談できる「同胞専門家による、同胞のための常設相談センター」として、この間、解決をサポートしてきた相談は延べ5000件を超える。日本国内はもちろん、海外に暮らす同胞からもインターネットや電話、ファクスなどを通して相談が寄せられている。(NPO法人同胞法律・生活センター事務局)

様変わりする「同胞」

 相談者は総聯、民団を問わず、また日本国籍を取得した「帰化」同胞やその家族、「ニューカマー」と幅広く、最近では中国、朝鮮族の同胞らが増加している。先頃の法務省の発表によると、「特別永住者」の数が47万1756人ですでに50万を切っている現実、国際結婚の増加、そして「ニューカマー」と言えども在日歴が20年を超え、「定住」や「一般永住」の資格を持つ人たちが増加している現実などを踏まえると、植民地支配被害者とその子孫らの総称であった「在日同胞」も、その内実は大きく様変わりしている。

 このような在日同胞の構成における変化は、相談内容にも反映されている。センターに寄せられる相談は、相続、国籍、在留資格、戸籍、離婚、金銭トラブル、借地、借家、交通事故などさまざまだ。この中で同胞に固有の相談は、相続、国籍、在留資格、戸籍に関するもので、これらがこの間のセンター相談件数の上位を占めている。しかし、その内容を見ると同胞の求めているものや同胞社会が大きく変化していることを感じる。

 相続では、南にある亡父名義の土地を名義変更あるいは処分したいという相談が増え、6.15以降南の故郷との距離が狭まった分、長年の懸念であった南の財産を処分しようと考える同胞らも少なくないようだ。実際に南の法務士(司法書士)に登記簿謄本の取寄せや、登記費用の見積もりなどを依頼することもある。在日同胞の場合、南にある土地等の不動産は長年人任せあるいは放置せざるをえず、また「帰化」して日本国籍を取得した人もいたりするなど、不動産の登記や処分は多少複雑な面がある。そのため南の不動産取得や外国人に関する特別法や税金、土地の評価額などの詳細について知りたいという同胞らも多い。

 とりわけ国籍に関する相談では、かつては日本人との婚姻による子や日本人配偶者の民族国籍取得に関するものが中心であった。現在もこの種の相談は多いものの、国籍にはこだわらないが子や妻に民族姓を名乗らせたいという相談が増えている。国籍は便宜的に捉え民族性に重きをおこうとする傾向が若い世代には強いようだ。

 最近では、中国、朝鮮族やその他の外国人との婚姻による国籍相談が目立つ。これに関連し、日本や配偶者の本国での婚姻手続きや、日本に呼び寄せ暮らすための在留資格取得の手続き、妻が里帰り出産した場合などの子の国籍や在留資格取得の手続きなどに関する相談もあり、さらに日本で生まれた子の教育に関する問題や、里帰りの際の子の旅券問題など、従前にはなかった相談が増えている。そのため、先ほどの相続に関する相談でも同様だが、センター事務局も南北朝鮮と日本の法律の知識だけでは到底対応できず、日々、調査や各種の情報収集に迫られている。

助けとなる情報を

 このように同胞社会内部は大きく変化しているものの、在日同胞をとりまく日本社会は旧態依然のままで、日常生活も厳しい状況にあることには変化がない。無年金で収入が無い高齢者、借家の明渡しを迫られても家が見つからないと悩む高齢者、障害のある高齢の息子を残しては死ねないと悩むオモニ、生活保護、片親家庭の生活支援、営業不振でサラ金やヤミ金からも金を借りざるをえない自営業、リストラや職場の民族差別など、法律だけでは解決できない非常に深刻な生活上の悩みや問題を抱えている同胞らは多い。

 以上のような同胞の現状を踏まえるとき、同胞法律・生活センターには、同胞らの多様なニーズに柔軟に対応し、実際に助けとなる各種の情報を提供できる相談体制づくりが何よりも求められている。折しも、総聯第20回全体大会では同胞生活奉仕、経済生活支援が重要課題として提起された。またこの間、在日本朝鮮人人権協会をはじめ同胞社会では介護福祉士、介護ヘルパー、不動産鑑定士、土地家屋調査士、一級建築士、不動産業者、FP(ファイナンシャル・プランナー)、外国人サポート関係者など、各種多様な資格を持ち幅広く活躍する同胞らが増えてきている。

 同胞法律・生活センターは、このような同胞社会の多様な人材と潜在力を活かし、同胞のさまざまな相談に対応し、サポートできるような体制づくりを、所長をはじめ新たな事務局スタッフらとともに目指す。現行の弁護士による法律相談活動をよりいっそう拡充強化させつつ、同時に「暮らし」に重点をおいた「生活支援型」の相談活動へとシフトさせる。

 すまい、年金、福祉、高齢者問題や日常生活上の各種の届出、申請手続きなど、テーマ別に同胞の生活全般をサポートできるよう相談員をはじめ必要な情報収集など準備を進めている。当面は安定した生活の基本である「すまい」の問題に重点的に取り組む。センター事務局に「すまいサポート」部門を設け、円満なすまい探しの手助けをはじめ、高齢者の在宅介護のためのリフォーム、境界トラブル、不良建築などすまいに関連するあらゆるトラブルの解決を目指す。

 また同胞の暮らしに役立つ情報の発信ステーションとしても、また北南朝鮮の法曹らの中継ステーションとしてもセンターならではの特性を活かした活動を目指す。そして同胞はもちろん各地域の同胞生活相談綜合センターにとっても有用なセンター活動を強化、拡充していきたい。

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[朝鮮新報 2004.9.4]