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〈高句麗壁画古墳世界遺産登録〉 北南の代表、登録の喜び分かちあう

 中国江蘇省・蘇州市で開かれていたUNESCO(国連教育科学文化機関)第28回世界遺産委員会が8日、閉幕した。開幕中の1日、朝鮮民主主義人民共和国の「高句麗壁画古墳群」63基と中国吉林省にある高句麗の旧都・「高句麗王城及び王陵・貴族墓」が世界文化遺産に登録された。また、UNESCO世界遺産センターのフランチェスコ・バンダリン主任によれば、今回、世界文化遺産29件、世界自然遺産5件がリストに登録された。

暴行事件に憤激

南北朝鮮代表メンバーらが世界遺産登録の喜びを分かちあった

 今回、世界遺産委員会が開かれた蘇州は風光明媚な太湖のほとりにたたずむ古都。運河が街を縦横に走り、そこにかかる古風な石橋が「東洋のベニス」と称えられる美しい景観を作り出す。宋代以来の大穀倉地帯として栄え、中国屈指の豊かな土地として知られている。

 6月29日、日本から成田―上海を経由、列車で蘇州入りした。上海駅では英語が通じず、超満員の利用客の話す中国語の喧騒の中を切符を求めて右往左往。「蘇州切符1枚」と紙に書いて窓口に渡しやっと切符を手にした。夜9時13分発の特急に乗って、一路蘇州へ。座席に座ってホッとしていると甲高い中国語に混じって穏やかな朝鮮語が聞こえてきた。

 話かけると蘇州の1つ手前の町、昆山市に暮らす在中同胞の柳日國さん(43)だった。キリスト教の伝道師で、朝鮮族の民族教育を受けた2世。記者が世界遺産委員会で「高句麗壁画古墳群」が朝鮮では初めて登録される予定だと話すと満面に笑みを浮かべて喜んでくれた。「在日同胞が日本のメディアの拉致報道で苦しんでいることをこちらの同胞たちもよく知っていて、心を痛めています。朝鮮学校に通う女子学生のチョゴリが切り裂かれた事件をニュースで知って、どんなに在中同胞らが憤激していたかをぜひ、伝えてください。 

 私たちは同じ『高句麗』民族の末裔です。たとえ、離れて暮らしても、喜びも悲しみも痛みも分かちあって暮らしましょう…」。

記者たちと交流

 翌30日、泊まったホテル・蘇苑飯店から市の中心部にタクシーで15分ほど走って会場入り口に到着。 世界遺産委員会締約国21カ国の旗が風に揺れ、周辺には空港よりもさらに厳重な警備網が敷かれていた。

中国政府代表(右)から祝福を受ける朝鮮政府代表ら(左)
米国政府代表と握手を交わす朝鮮政府李儀夏団長(右)

 プレス登録を終えた後、会場入りして、朝鮮政府代表団にあいさつした時には、身内に会えた喜びでいっぱいになった。

 団長の李儀夏・朝鮮文化保存指導局副局長、姜革民同世界遺産担当、李気運・朝鮮文化保存社遺跡室長、金昌民・UNESCOパリ朝鮮代表部参事らが笑顔で迎え、「記者先生、遠くから1人でご苦労さまでした」と声をかけてくれた。朝鮮代表団の回りには各国のメディア、とりわけ日本や南の記者団がはりつき、幾重にも取り巻いている。 近くには南の政府代表のメンバーが笑顔で北の代表らと談笑している。会期中、この光景はずっと続き、南北の間には一つの家族のようなきずなが生まれていた。

 注目を集める北の代表団に一歩でも接近しようと記者に近づいてきたのは、北京在住の日本の女性特派員たち。北の代表たちも学者肌のフェミニストたちで、彼女たちのいくつかの質問を伝えると、何でも笑顔で丁寧に答えてくれるので、すっかりいい雰囲気が生まれた。「本当にいい人たちですね。洗練された風貌とソフトな物腰を見て、北のイメージがすっかり変わりました」とある記者。それに応えて記者は「北の人たちは素朴でやさしい人が多いよ。思い込みが過ぎて目が曇ると真実が見抜けなくなりますよ」とやんわりと釘を刺した。市内のレストランで偶然隣り合わせになった時、記者たちが記念撮影を依頼すると、北の代表たちもすぐ快諾。撮影しながら「日本が壁画古墳の保存に何か協力できますか」と記者たちが声をかける。「平山画伯には長年尽力していただいている。小泉総理の再訪朝で、今後は遺跡保存や研究などの協力関係もより進むだろう」と李団長。

 また、壁画の公開についても、「壁画に関してはすべてのメディアに公開したい。壁画のドキュメンタリー番組の製作は、朝鮮総聯などと相談して日本のメディアなどと協力して作ってもいい」などと語った。自然体の受け答えに周囲も和む。また、朝鮮国際旅行社が「高句麗壁画古墳群」の世界遺産登録に照準を合わせ、朝鮮の遺跡ツアーを企画していることもあって、「たくさんの日本の観光客に平壌にぜひ、足を運んでほしい」とPRも忘れなかった。

協力惜しまず

900年以上の歴史を誇る蘇州近郊の水郷の町、周荘

 1日、ついに「高句麗壁画古墳群」の世界遺産登録が、午後4時46分、大きな拍手に包まれて、全会一致で決まった。休会に入ると南の代表たち、記者団が取り囲む中、南北の団長が何度も感激的な握手を交わす。許権UNESCO韓国国内委員は「国連の場で分断国家の南北朝鮮が、共に1つの目標に向かってこんなに協力を惜しまずがんばったことがあっただろうか」と目を潤ませながら感激を口にした。

 「中国は巨大な発展ぶりを見せている。ロシアも着々と力をつけている。日本の軍事大国化も不気味だ。その中にあって、朝鮮半島が一つになって、民族の英知をあわせるためにも、わが民族の誇るべき高句麗文化を共に尊び、学び、守っていくことは最重要課題である」と。(朴日粉記者)

微笑ましい光景

[朝鮮新報 2004.7.14]