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〈大阪、奈良、和歌山 ブロックサマースクール〉 朝鮮人としての始まりは、今

本音ぶつけ生き方みつめた3日間

 サマースクールで表面化する矛盾、そして悩み。それは「チョソンサラムとしての自信と誇り」を日校生が持つ「きっかけとなる過程」だ。さらにそれは、これからどのように生きるかという課題として提起される。個々が悩みを交錯させ本音をぶつける今年(44期)の大阪、奈良、和歌山ブロックサマースクール2006「響け!! ウリHeart〜君のアツさは想定外!?〜」(グリーンエコー笠形、8〜10の3日間)に同行し、日校生90人(参加者は関係者含め150人)が響かせたハートを追った。

3つのキーワード

みんなで記念撮影。「響け! ウリHeart!」と叫んだ。

 期間中、参加者は「ウリ組」「タンギョル組」「トンイル組」の3つのグループに編成された。「ウリ(私たち)がタンギョル(団結)し、トンイル(統一)しよう」という意味が込められているという。

 初日のキーワード「起こせ!! ウリHeart!」では、サマースクール参加者それぞれの目的意識を明確にした。日本の中学、高校で学ぶ日校生が日常的に抱く矛盾と葛藤を表面化させ、その一方でチョソンサラムとしての感情を呼び起こそうというもので、大阪朝鮮歌舞団と生徒らの文化公演が行われた。

 演劇「始まりは、今!」は、40期会長の全小百合さん(21)が脚本を手がけた。「勇気をふり絞るのも、きっかけを得るのも今。在日であるという認識を持つだけではなく、『看板』である本名の大切さを強調した」(全さん)という。演劇は、出演者全員による「朝鮮人としての始まりは、今!」という台詞で締めくくられた。

討論会では「本名」「ダブル」についてなど、講義はつきなかった。

 2日目。「探せ!! ウリHeart!」をキーワードに民族体験、スポーツフェスティバル、弁論大会が行われた。民族体験コーナーは、チャンゴ、舞踊、キムチ作り、民俗ノリ(チェギチャギ、ペンイチギ)で構成された。参加者は興味津々のまなざしで各コーナーに没頭していた。民族体験の発表会では、照れながらも堂々とした表情で発表する参加者の表情が目立った。

 夜は焼肉をほおばり、キャンプファイヤーを囲んでのフォークダンスを楽しんだ。その後の弁論大会では、素直な思いを言葉に込めていた。(発言内容別項)

 民族文化に触れ、スポーツフェスティバルで汗をかき、自身が今思うことを素直に弁論する過程は、忘れがたい思い出となっただろう。

 「響け!! ウリHeart!」が3日目のキーワード。組別、支部別にサマースクールをふり返る時間が設けられた。

「本名で生きる」

ともに汗を流すことで互いの距離はより縮まった(スポーツフェスティバル)

 中2からサマースクールに参加し、高1で本名宣言した大阪学生会会長の朴泰義さん(高3)は今回の3日間と、学生会活動を感慨深げにふり返り、「朝鮮大学校への進学も視野に入れている」と心境を吐露していた。(発言内容別項)

 薛東司希さん(高2)は今回、「本名宣言」した。「学生会は『自分』というものができたトコ。そして『本名』で生きるための仲間を得たトコ。朝鮮人として当たり前に堂々と生きたい」と力みなぎる発言をした。

 大阪、奈良、和歌山ブロックのサマースクールには特徴がある。大阪朝鮮歌舞団団員たちが毎年、オープニングの公演後、指導員として参加者と寝食をともにしていることだ。華麗に歌い、踊る「憧れの存在」が参加者と討論する姿は、今年もいたるところで見られた。一方、大阪の朝青員らが率先し、指導員として大勢参加していることも特徴のひとつとして挙げられる。

 2日目、「家に帰りたい」という参加者がいた。不安そうな表情を浮かべている。しかし指導員と10分話したあと、「もっとおるわ」とみんなの輪に戻っていった。サマースクールは、気持ちの不安を取り除き、自信を与える場でもある。

 最終日には、組別の弁論大会で発言を渋る参加者がいた。まわりから何度も促され、その結果最後に彼が口にしたのは「これで終わらんぞ」というひと言。サマースクールがひとつの「きっかけ」であることを表していた。

 「堂々と生きよう」−3日間、難しいテーマを思春期の今に、深く熟考する中高生がキラキラと光って見えた。(李東浩記者)

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大阪学生会の朴泰義会長(高3)

弁論大会の発言から

[朝鮮新報 2006.8.29]