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中国・瀋陽で暮らす同胞たち 国籍超えた「朝鮮コミュニティー」

「海外同胞同士の団結を」

 【平壌発=李松鶴記者】12〜17日まで、「先軍政治に関する海外同胞の討論会」を取材するため中国・瀋陽を訪れた。中国には、約200万人の同胞が住んでいる。その大半は中国籍を持つ朝鮮族で、朝鮮籍所有者も約1万人いる。彼らの多くは瀋陽で暮らし、同胞コミュニティーを形成している。一方、こうした同胞たちの生活上の悩みなどを解決するための組織として、在中朝鮮人総連合会(在中総連)がある。

「うれしかった結成」

在中総連瀋陽支部の廉順子さん

 中国では、1949年10月1日の建国以前から中国にいた同胞には中国籍を与え、建国以後に渡ってきた同胞には朝鮮籍を与えている。

 また、北京、上海の同胞には時期に関係なく、すべて朝鮮籍が与えられ、朝鮮の海外公民として扱われている。

 同胞が最も多く暮らす瀋陽では、地理的に朝鮮と近いこともあって、ほとんど朝鮮語が話されているが、その他の地域では中国語が使われている。

 廉順子さん(72)は瀋陽で暮らす公民の一人で、56年11月、夫と共に中国に渡ってきた。夫は当時、中国人民解放軍の軍楽隊に所属しており、朝鮮戦争にも参加した中国籍の朝鮮族だ。中国にわたってきた廉さんは、同胞の幼稚園で教員をしながら3人の子どもを育てあげた。

 今は、退役して芸術分野で働く夫との二人暮らし。廉さんは「孫も3人いる。一人は今年、7万人中11位の成績で清華大学に合格した」と顔をほころばせた。

 朝鮮には姉と弟が住む。1年に1回ほど訪れる。

妙香山レストラン・西館に勤める女性従業員たち。多くが平壌から派遣されている

 廉さんはまた、在中総連瀋陽支部の分会長も10年以上勤めてきた。「祖国のニュースを同胞たちに伝えたり、冠婚葬祭などがあるときにほかの同胞たちに知らせて集めたりというのが主な役割。91年に在中総連が結成されたときが一番うれしかった。おかげで組織の代表として祖国を訪問することもできた」。

 分会の同胞たちには高齢者が多く、昔に比べると会う機会は少なくなったが、行き来は今も途絶えていないそうだ。

 廉さんは、「夫は『中国人』だが、時には自分よりも愛国心が強いときがある。82年には2人で朝鮮を訪問し白頭山などを見て回った。夫はとてもうれしかったようで、自分の祖国は朝鮮だと誇らしげに話していたのが昨日のことのようだ」とほほ笑んだ。

 一方、瀋陽には朝鮮の各機関が出資して運営するホテルやレストランも多い。七宝山ホテルは中国で4つ星の高級ホテルで、朝鮮から派遣された人たちと中国人が一緒に働いている。レストランも妙香山レストラン(東と西の2軒がある)、牡丹館、平壌館などがあり、平壌館には朝鮮の平壌ホテルで働いていた従業員が大勢派遣されていた。

 情勢が緊迫するなか、日本では中国が朝鮮への出入国を制限しているというニュースが流れているそうだが、瀋陽で見たかぎりそのような兆候はまったくなかった。

7地区に61の支部

楊永東、在中総連議長

 「50年代から公民のために自発的に活動する組織はあった。祖国のニュースを公民に伝えるのが主な役目だった。在中総連のルーツもここにある」

 在中総連の楊永東議長はこのように述べながら、同組織について説明してくれた。

 91年3月3日、統一運動の熱気の高まりを背景に「汎民連(祖国統一汎民族連合)在中朝鮮人本部」が結成された。この組織と人材をベースに92年、在中総連としての活動が始まった。

 本部は瀋陽。7つの地区(省)に地区協会があり、地区協会の下には61の支部がある。また、在中朝鮮経済人連合会、在中朝鮮青年連合会、在中朝鮮人女性委員会などの傘下団体もある。

 2002年6月には3階建てのビルに本部を移転した。

 在中総連には現在、朝鮮籍を持つ公民だけが加盟できる。「同胞とは言え、中国籍の人たちはあくまでも中国の国民だ。彼らの多くが在中総連への加盟を求めているが、中国政府との兼ね合いなどから、今のところはまだ受け入れることができない。もちろん、彼らのためにもできるかぎりのことはしている」と、楊議長はその背景を説明した。

 在中総連の活動は大きく分けて二つある。一つは一人でも多くの公民を探し出して組織に網羅し、祖国のニュースなどを伝えることだ。

 もう一つは、朝中親善をさらに強化するための活動だ。また、冠婚葬祭など生活上の便宜を図るのも重要な活動の一つだ。

 在中総連では、機会あるごとに中国政府に祝電を送るほか、災害が起きた際には慰問電とともに支援金も送っている。こうしたことから、中国政府では在中総連本部への税を軽減しているほか、吉林省などでは、食料や医療面などの優遇措置を取っている。

 楊議長は、「最近では、多くの南の人たちも本部を訪ねてくる。同族だから、われわれとしても歓迎だ。2月16日や9月9日、10月10日などを機に毎年行っている宴会にも招待している。彼らも喜んで参加してくれる」と述べながら、次のように強調した。

 「ここと違い、日本にいる同胞たちがとても苦労しているということを私たちも知っている。情勢が緊迫すればするほど、すべての海外同胞が一致団結して祖国を守っていかなければならない」

平壌−瀋陽 12時間列車の旅

[朝鮮新報 2006.10.25]