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朝大創立50周年記念・アジアの渡り鳥保護国際シンポ

協力、情報交換促進を確認

 朝鮮大学校創立50周年記念・アジアの渡り鳥保護国際シンポジウム(主催=朝鮮大学校)が11月26日、朝鮮大学校記念館で行われた。南朝鮮、中国、ロシア、モンゴル、インドネシア、英国、米国、ドイツ、日本の鳥類研究者、環境保全団体関係者、動物園関係者ら約70人が参加した。30年近く鳥類の保護研究に携わる同大教育学部の鄭鐘烈学部長の基調講演をはじめ、ツル、クロツラヘラサギの分科会報告、アジアの渡り鳥保護を考えるパネル討論など内容は多岐にわたった。アジア各国が協力して渡り鳥保護研究の現況と課題を認識し、情報交換を促進していくことを再確認したほか、同研究に大きな役割を果たしてきた朝大が、今後も先導的な役割を果たしていくことの必要性が強調された。(文=金明c記者、写真=文光善記者)

基調報告をする朝大の鄭鐘烈・教育学部長

 シンポでは初めに主催者を代表して朝大の張炳泰学長があいさつ。続いてマイク・ランズ・バードライフインターナショナル事務総長、小池裕子・九州大学教授、環境教育メディアプロジェクトのコシマ・ウェーバー・リウ氏が来ひんのあいさつをした。

 続いて鄭鐘烈学部長が「アジアにおける希少鳥類の保護、とくにツル類とクロツラヘラサギに関して」と題して基調講演を行った。

 講演ではまずツル類の保護について報告があった。北東アジア地域にはマナヅル、ナベヅル、タンチョウの3種の代表的なツルが生息していると説明。とくに朝鮮半島のタンチョウの越冬地が過去の主要越冬地であった江原道鉄原、安辺郡、黄海南道龍淵郡などから、最近は鉄原に集中化している問題に言及し、分散化を促進するとともに、以前に越冬していた生息地の生態環境の復元問題が解決されなければならないと指摘した。

 一方で05年4月、北京で国際ツル財団(ICF)、南北朝鮮、中国の関係者などによって「地域に密着した保護区管理計画」に関するプロジェクト構築が討議されたが、1年半がすぎても実施段階に入っていないと指摘。今後、農村発展の促進、地域の生物多様性保全の実現、朝鮮での保護地域管理と農業発展のモデルケース構築を進めるべきだと語った。

 クロツラヘラサギは06年1月には1681羽が確認されている。鄭学部長は、ツルの場合は生息地外保護問題で多くのことが解決されたが、クロツラヘラサギの場合は生息地内と外の両方の保護問題が解決されなければならないと強調。

 クロツラヘラサギが絶滅の危機に瀕した鳥類であることが国際的な問題になったのは94年のドイツでの世界会議。それから10数年間、アジアの鳥保護研究活動でアジアの国、地域の研究者が協力して多くの成果をあげてきたと報告した。

 そして今後、主な繁殖地である朝鮮半島の中部、黄海南道延安郡沿岸の無人島やDMZ(海上部)などで生息地保護管理を行うことが重要だと述べながら、社会的な理解と認識を高め若い世代の関心を高める教育活動が大切だと報告した。

 各分科会の報告も行われた。ツル分科会の報告をバードライフアジアのシンバ・チャン氏、クロツラヘラサギの人口繁殖についての報告を多摩動物公園野生生物保全センターの杉田平三氏、クロツラヘラサギ分科会の報告を日本野鳥の会の山田泰広氏がそれぞれ行った。杉田氏は1989年から朝鮮大学校との共同研究で人口繁殖に取り組んだ成果と技術の確立を報告し、今後の課題として近親交配の解消、新規固体の導入、積極的に繁殖を図ることなどを挙げた。

 休憩をはさんでバードライフ・インターナショナルネットワーク部長のマルコ・ランベルティーニ氏が「世界をかける翼 渡り鳥と世界の環境保全」と題した報告を行ったほか、「アジアの渡り鳥保護の次のステップは?」と題してパネル討論も行われた。

 会議ではまた、鳥類研究に長年携わり国際的に多大な功績を残した鄭鐘烈学部長にバードライフ・アジアから感謝状が手渡された。また鄭学部長を支えてきた夫人に花束が贈呈された。

 鄭学部長は「20、30年もバードライフ・アジア代表の市田則孝さんをはじめ関係者と共に助け合いながらここまでやってこられたことに感謝している」と語った。また「妻が一生懸命応援してくれた。大学で約13年間、関係者や教え子たちを集めて焼肉パーティーをやってきたが、その事務局長として毎回努力してくれた」と「内助の功」を披露した。

 シンポジウム終了後、食堂で歓迎懇親会が行われ、参加者たちは食事を楽しみながら交流を深めた。

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パネル討論「アジアの渡り鳥保護のステップは?」

[朝鮮新報 2006.12.1]