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06年「やより賞」 「在韓米軍犯罪根絶運動本部」事務局長・高維京さんに

06年「やよりジャーナリスト賞」はライター・山本潤子さん

授賞式での高さん(左は東海林路得子さん)

 ジャーナリストの故・松井やよりさんの遺志を受け継ぎ、「女たちの戦争と平和人権基金」が05年から始めた「やより賞・やよりジャーナリスト賞」の06年の贈呈式が10日、東京都新宿区にある早稲田奉仕園AVACO内チャペルで行われた(「やより賞」=02年末に死去した松井やよりさんの遺志により、草の根で活動する優れた活動家やジャーナリストを支えることを目指して創設された。50万円を贈呈。「やよりジャーナリスト賞」=やより賞対象者=今年は高維京さん=を取材し、広く世界に紹介する作品を制作する人に、取材経費・50万円と発表の場を提供する)。

 今年、「やより賞」を受賞したのは、韓国のNGO活動家の高維京さん(35)。米軍非難の声をあげることに対し、強いタブー視がある南の社会において、米軍による犯罪被害者の人権擁護、特に米軍からの性暴力を受けた被害女性の立場から、軍隊の暴力を白日にさらすべくエネルギッシュに活動している。「駐韓米軍犯罪根絶運動本部」事務局長として、「駐留米軍地位協定」(SOFA)や平澤米軍基地拡張に反対するキャンペーンに取り組みながら、あくまでも被害者の側に立って、被害調査と支援に全力を挙げてきた。

高維京さん

 高さんは受賞のスピーチの中で「尊敬する故松井さんの名を冠した栄誉ある賞を戴いたことは光栄なこと」だと述べ、「受賞のもっとも大きな理由には、『運動本部』創設以来この14年間に起きた米軍の犯罪による被害、そして、聖域として扱われる韓米同盟により、多くの人々の人権と尊厳が破壊されてきた現実を告発してきた私たちの活動の歴史が背景にあると思う。その歴史は多くの女性、社会的な弱者の苦痛に満ちた声とそれを理解し、伝えようとした活動家の勇気で満たされている」と語った。

 同氏は、「60年間の米兵駐屯の歴史は、犯罪と暴力、訓練による民間人被害と環境汚染、米軍基地による個人の財産権や生存権の侵害など多くの被害を発生させてきた。その甚大な被害がまともに解決されない最大の原因は、SOFAによって、米軍が法的に保護されていることと、韓国社会において韓米同盟が聖域として位置づけられてきた」からだと断じた。

 そのうえで、同氏は「韓米同盟を主張する側は、駐韓米軍によって被る人権侵害や被害についての問題提起を、不純な意図があると攻撃してきた」と喝破。その結果、梅香里の住民は爆撃の騒音を我慢すべきだと抑えつけられ、虐殺の記憶に苛まれてきた老斤里の住民はその苦痛を刻んだまま生き延び、基地村の女性たちも暴力と犯罪にさらされてきたと強調した。

 そして、メディアの歪んだ報道についても言及し、被害女性が純潔かどうか、過去を問うのに力を入れている報道ぶりを厳しく批判した。

「女たちの戦争と平和資料館」の展示

 同氏はさらに、「6.15共同宣言以降、朝鮮半島における米軍駐留の名分を失ったら、今度は経済的利益のために、受け入れるべきだという名分が台頭してきた。しかし、米軍基地が犯罪と暴力、環境汚染の社会的な問題を起こすところだと人々の間で認識されるようになり、基地自体としてはこれ以上歓迎されない存在となっている」と指摘しながら、「困難な状況のなかで、志を繋いで、軍隊の暴力性を暴き、女性たちの励ましあいと連帯によって、人権の価値、平和の価値が私たちの日常で生きる価値となるようお互いにがんばりましょう」と力強く訴えた。

 やよりジャーナリスト賞を受けたライターの山本潤子さんは、在日朝鮮人、沖縄、朝鮮半島に暮らす人々と向き合いながら、日本と東アジアがよりよい関係を築く一歩へ向け、力になりたいと活動を続けてきた。地方や草の根で粘り強く問題解決に取り組み続けている人々、いつかは、世界を支え続ける小さな水脈として新たな価値観を創り出そうとしている人々に着目して書き続けてきた。

 山本さんは受賞の感想について、「高維京さんのような平和運動家は、韓国の基地村や平澤市大楸里のような『孤島』と陸地の回路を結ぶべく荒波の海を渡るように表に立って活動されています。今回の作品では、高さんという船を頼りに『陸』と『島』の人たちが結びあえる場を作りだしてゆきたいと思う」と意欲的に語り、「作品づくりを通じ、日本と朝鮮半島の間に、差別と暴力ではない、新たな回路を見出す可能性に力を尽くしたい」と力強く語った。

 2人の受賞について東海林路得子・同人権基金理事長は「目立たないところでコツコツと一つの反戦活動を続ける2人が選ばれたことはすばらしい。日本や世界を変えていこうとする長期的視野に立って、今後も活動してほしい」とお祝いのメッセージを送った。

 また、同日、シンポジウム「米軍基地と女性への暴力」(次号掲載)が行われた。(朴日粉記者)

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[朝鮮新報 2006.12.18]