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在日本朝鮮人蹴球協会 李康弘理事長に聞く、在日ユース世代の強化 安英学選手のKリーグ移籍などについて

「国際舞台への道、積極的に準備」 「学校クラブの発展にも重点」

 昨年のW杯アジア最終予選に出場した安英学(釜山アイパーク、27)、李漢宰選手(サンフレッチェ広島、23)や梁勇基選手(ベガルタ仙台、24)の活躍、大阪朝高サッカー部の選手権ベスト8など何かと話題が多い。今後、朝鮮学校のサッカー部、地域での強化をどのように推進していこうとしているのか、また、安選手のKリーグ移籍、朝鮮大学校の金光浩監督がJFLのアルテ高崎監督に就任した問題などについて、在日本朝鮮人蹴球協会の李康弘理事長(43)に聞いた。

−安英学選手のKリーグ・釜山アイパークへの移籍について。

 安選手は2年前からKリーグへの移籍を希望していた。技術だけでなく、ハードな当たりなどで自分の実力を試したいと言っていた。

 06年ドイツW杯アジア最終予選で朝鮮代表として出場していたため、手続きを遅らせていた。99年に梁圭史選手(広島朝高卒、28)をKリーグの蔚山現代に送った経緯もあったし、安選手の希望を尊重し、活躍の場を世界へと広げることに賛成してのことだ。朝鮮サッカー協会から承諾を受けてKリーグ移籍が決まった。

 サッカー協会でも在日同胞選手が活躍の舞台を広げることは、とてもいいことだと考えている。3世の在日同胞が南の地でどれだけ結果をだせるのか大きな関心を寄せている。

 協会では安選手をはじめ、Jリーグ、JFLなどで活躍する選手たちがもっと広い舞台で活躍できるように力を注いでいくつもりだ。

−朝鮮大学校サッカー部の今後の強化について。朝大サッカー部監督だった元朝鮮代表の金光浩監督が今季からJFLのアルテ高崎の監督に就任したが。

在日サッカー選手の朝鮮代表への道も協会で積極的に準備している(写真は06年W杯アジア最終予選の朝鮮×日本、昨年2月9日、埼玉スタジアム)

 朝大サッカー部の強化については1998年に体連、朝大、サッカー協会の3者で話し合った。朝大サッカー部から体連に強化対策の要請があったからだ。

 クラブの秩序を保ち、専門指導員、サッカーに専念できる環境を整えようと決めた。そして、サッカー協会が現場を見るようにした。

 協会から監督を派遣し、3年交代でみるようにした。金監督は01年から朝大監督になり、延長して05年の12月まで指導してきた。金監督の指導の下、昨年に東京都大学リーグ1部で4位入賞を果たした。関東大学リーグ2部昇格試合に臨むも惜しくも敗れたが、一定の成果を挙げてきた。また、この間グラウンドの整備やナイター設備などの環境をしっかりと整えたことも大きな動きだった。

 契約満了後、アルテ高崎から監督就任の要請があった。今後、金監督がJFLでコーチング能力をよりいっそう磨き、在日サッカー界の発展に大きく寄与することを強く望んでいる。時期を見て朝高、朝大監督として送る意向もある。

 「誰が朝大サッカー部を見るのか」という声が聞かれるが、今年度から日本サッカー協会公認のS級ライセンスを持った李清敬・体連副理事長が総監督を務めることになった。今年の卒業生で朝大初のJ1入りを果たした鄭大世選手(フロンターレ川崎)が登場したように、今後も強化に務めたい。

−少年、ユース世代サッカー選手たちの強化策について。

学校クラブの強化は優秀な選手の育成に欠かせない(写真は第27回初級部中央サッカー大会)

 初級部では学校を中心に学区制選抜を強化していく。大阪朝高が全国高校選手権大会に出場したように、各地の朝高が結果を出せるように学校クラブが一つになることが大切だ。そのために初、中、高級部の中央大会の強化はもちろん、学区制の選抜、東西の地域選抜、4ブロックの選抜、全国選抜を行い、選手たちが高いレベルでサッカーができるように育成していきたいと考えている。

 最近、学校の部活動とは別に日本のサッカークラブに入る生徒が少なくない。協会としては、専門体育として見た場合、反対はしていない。ごく一部の選手には高いレベルでやるため力になるだろう。しかし、優秀な選手だからクラブに行っているとか、クラブに行ったからうまくなったというニュアンスは違う。同胞たちにはここを誤解してほしくない。

 これから初級部から学区制の選抜をやっていきたいと考えている。都市部の地域だけの強化でなく、違う地域ではブロック選抜をしたりして、もっと初級部生徒たちに刺激を与えたい。

 試合に出ることが少ない中1、高1の選手たちにもっと機会を与えたいと考えている。初6と中1、中3と高1の大会を開催できれば、選手のモチベーションを高められるし、埋もれている優秀な人材を発掘できる。サッカー協会だけでなく、学校側の関心やバックアップも重要になってくるだろう。

−指導員の育成については。

 昨年8月、東京で初めてC級ライセンス取得の講習会を行った。今年度までに初、中の教員たちみんながライセンスを取れるように継続させていく。教員たちはもっと研究に力を入れて選手育成をしてほしい。

 専門家が教えたからといって成果が顕著にでるとは限らない。教員たちでもサッカーに研究熱心で情熱さえあれば必ず成果が出てくる。サッカーを通じて人間育成に励んでほしい。なんといっても初、中、高の教員たちが連携をしっかり持って組織化されれば成果が出てくるだろう。大阪朝高の選手権8強は、学校同士の連携が結果につながった形だ。

−年齢別国家代表(朝鮮代表)の問題については。

 15歳以下のジュニアに関しては、アジア地域に関してはまだ技術で通用する部分があるので、現在召集する準備はできている。

 U−19では、対象が朝高、朝大の1年生になるが本国の選手と比べるとまだまだ肉体的に追いついておらず、選出するのは難しい。

 U−23やA代表に関しては、Jリーグなどのプロ、JFL、アマチュア、朝大、日本の大学で朝鮮籍を持った選手たちの全員にチャンスがある。ここから優秀な選手を選抜して、今年の7〜8月に平壌で行われる代表の合同練習に参加させる予定だ。U−23朝鮮代表が11月のドーハアジア大会に出場するため、朝鮮サッカー協会と調節中にある。

 とにかく少年サッカー選手たちは、これから高校のインターハイや選手権大会へ出場する「夢」を持ってほしいし、Jリーグだけでなく、世界にも舞台があることを認識してほしい。そして各朝鮮学校の教員たちは、生徒たちの夢を実現させてあげられるように指導していってほしい。(整理=金明c記者)

05年度事業報告と06年度事業計画

[朝鮮新報 2006.4.13]