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全国クラブ選手権に出場する 東京闘球団「高麗クラブ」 23区内でのラグビースクール実現を

「どん底からはい上がったラグビー魂」

 在日同胞社会人ラグビーチームの東京闘球団「高麗クラブ」が、日本ラグビー界で権威ある「第5回真田洋太郎賞」(7日、秩父宮ラグビー場クラブハウス)を受賞した。6年前の失格処分で1年間の公式戦出場停止、2002年には東京都4部スタート、それから最短の4年で1部に昇格。そして今年、東日本トップクラブリーグで3位の成績を残し、来年1月に開催される全国クラブ選手権に13年ぶり2回目の出場を決めた。受賞理由はこの成長過程とプロセス、チームの組織力にある。どん底から地をはいつくばりここまで上り詰めた在日ラガーマンたちの熱き魂がこのクラブチームに宿っている。

悪夢の失格処分

部員は約40人。1977年に「臨津河」として結成。83年に「高麗」に改名し、今年で23年目を迎えた。練習は毎週火、木の午後8〜10時、東京朝高人工芝グラウンドで行われる

 「2200日の屈辱、俺たちの7年戦争」−高麗クラブ代表の姜宗卓さん(35)は、失格処分を受けた日からの戦いをこう表現する。2200。たった4文字の数字だが月日にすると長い。「6年前の悪夢」。それから今の高麗クラブの姿を誰も想像することはできなかった。

 00年の春、東京都クラブ選手権1部リーグの試合の朝、高麗クラブの金台成さん(40)の息子(当時2歳)がひきつけを起こした。夫婦で息子を病院に連れていったため、金さんは試合に行けなかった。それでも妻が背番号15のユニフォームを持って駆けつけたがすでに遅かった。ドレスチェックは5分前に終了していた。ユニフォームを時間内にそろえられなかったため、都クラブリーグが定める規約により、次の年から1年間の公式戦出場停止、そして翌年から4部のスタートとなった。チームはどん底まで突き落とされた。

 「チーム内で今後どうしていくか話し合った。埼玉や神奈川からの出場なら2部までしかリーグがないから早めの上位リーグ進出が可能だった。それでも東京朝高OBチームとしての意味、メンバーたちの『東京都代表』への意気込みとこだわりは強かった」

昨年9月の東京朝高ラグビー部創部30周年フェスティバルでの三鷹オールカマーズとの試合

 ユニフォームを持参できなかった金さんは、涙してみんなの前で謝罪した。チームを去ろうと思ったが、考え抜いたすえ残ることを決めた。40歳にして今も現役で続けているのは、それだけこのチームに魅力があるからだ。

 「『やめていく人がいるのは先輩の責任だよ』ってきつい言葉もあった。それでも責任を取ろうと、1部に上がるまで5年は続けようと思った。それから毎年後輩たちに『今年も一緒にやりましょう』って言われ続けて…。今の自分がいるのも周りの後輩たちのおかげ。クラブに対する思いが余計に強くなった」

 姜さんはいう。「失格は先輩の責任じゃなく、チームの責任。チーム内の規律をここからもう一度正した」。

チームを信じて

 下位リーグでのプレーがいやで去っていくメンバーもいた。一時は20人を切ったこともあったが、必死にチームの建て直しを図った。1年間の出場停止期間は、関西遠征を計画して大阪闘球団の「千里馬クラブ」や京都闘球団などと試合をし、在日本朝鮮人ラグビー選手権大会を目標にしながらモチベーションを維持した。

 当時、主将だった金龍洲さん(31)は、一番しんどかった5年間の主将時代をふり返る。「チームを信じてここまでやってきた人間が、今はチームの主力だし、チームを存続させたいってやつばかり。ラグビーが好きだから今まで続けられた」。

 02年から都クラブ選手権の4部から3部、2部へと毎年、全勝優勝で昇格。最短の4年で1部復帰を果たした。「下位リーグで負ける気はしなかった。それだけここに集まった人間はみんな真剣」(金龍洲さん)。

 1部リーグでも全勝優勝し、都代表として臨んだ東日本クラブ選手権で準優勝。東日本クラブトップリーグへと昇格した。

 今年からトップリーグがスタート。現在、主将を務める申ハンソルさん(29)は、「仕事に家庭と忙しいけどやりがいがある」。新体制の下、全国クラブ選手権出場を目指した。「チームの意思統一とトップリーグの中でつねに勝てるチームを作ろうと心がけた」。

 トップリーグでは5チーム総当りで試合を行い、2勝2敗で3位となり、全国クラブ選手権の出場権を獲得した。93年の第1回大会以来、13年ぶりのことだ。同大会には全国の予選を勝ち抜いた8チームしか出場できない。全国にクラブチームが約1500もあるというから、高麗クラブの実力がわかる。第1回大会に出場した唯一の現役である姜さんは「あとは頂点を目指すのみ。優勝して在日ラグビー界の力になりたい」とその思いは熱い。仮にここで優勝すると、テレビ放送される日本選手権に出場し、1回戦は大学王者との対戦となる。

 高麗クラブが掲げる目標は高い場所にある。それは地域と密着したクラブを作ること。04年に完成した東京朝高の人工芝グラウンドの最高の環境を使って、23区内でのラグビースクールの実現、在日の子どもたちと北区十条を中心とした日本の子どもたちにラグビーの楽しさを伝えていきたいという。なんともおもしろい発想。これが実現すれば、高麗クラブのスクールで学んだ日本の子どもがどこかの高校から全国大会の「花園」に出場する日が来るかもしれない。

 「すぐに実現させたい。真のクラブチームのあり方がここにある」(姜さん)

 クラブラグビー最高峰の大会、全国クラブ選手権は来年1月7、8日、神奈川県の横浜みなとみらいスポーツパークなどで行われる。高麗クラブの1回戦(7日、午後12時、みなとみらい)の相手は九州王者の帆柱クラブ(福岡)。勝利すれば8日に準決勝があり、決勝戦は28日、秩父宮ラグビー場で行われる。(金明c記者)

「第5回真田洋太郎賞」受賞 組織力とプロセスに高い評価

[朝鮮新報 2006.12.13]