〈瀋陽 在中同胞コミュニティ -下-〉 子育ての糸口探る2世たち |
自分のルーツ知り民族を誇りに 【瀋陽発=呉陽希記者】中国に住む公民2世の多くが現在、30〜50代だ。彼らの悩みのひとつが「子育て」と「教育」だ。彼らは、自分たちの子どもたちの世代が、中国で暮らしながらも祖国−朝鮮にルーツがあることを自覚し、朝鮮との関係を深めていくことを願っている。 西塔「コリアンタウン」
瀋陽市和平区にある西塔という繁華街は、中国語を話せなくても朝鮮語さえできれば食事、買い物といった日常生活に困らない。 大型スーパーやインターネットカフェ、レストランや洋服店などハングルで書かれた看板が軒並み連なっており、路地では中年女性たちが樹脂の樽いっぱいに入ったテンジャン(味噌)やコチュジャン、スンデ(朝鮮風ソーセージ)や数種類のキムチなどを売っている。いわゆる「コリアンタウン」だ。 南の企業家が運営する娯楽施設や飲食店にまじり、「平壌館」「安山館」「東妙香山」など朝鮮のレストランも13店舗ある。それらの看板には朝鮮の国旗が描かれている。 西塔には元来、朝鮮族が多く住んでいたため、このような「コリアンタウン」が形成されたという。 しかし、そこはコリアンだけが生活する「閉ざされた社会」ではない。「朝鮮族の力を示すもの」として中国社会の一部と化している。 「瀋陽市の中心部である和平区にこのような街があることは、それだけ朝鮮族の力が強いということです」と瀋陽在住の公民である沈善実さん(44)は説明する。 そのような環境の中で育ってきたのが2、3世だ。現在、在中公民社会にも世代交替の波が押し寄せている。 「民族意識しっかりと」
在中公民2世を取り巻く環境は、1950〜1960年代に祖国から移り住んだ1世のそれとは違う。 「ほとんどの公民は結婚相手を中国朝鮮族から選んだ。広い中国で同世代の公民を探すのは難しい。国籍は違っても同じ民族だとして結婚相手に選ぶ場合が多い」と崔首峰・在中総連事務局副局長(49)は話す。 朝鮮族の国籍は中国だ。中国の国籍法では両親の一方が中国国籍所有者である場合、その子どもには中国国籍が与えられる。 朝鮮族子弟の多くは朝鮮族学校に通っている。 崔副局長は、朝鮮族学校での教育内容について「中国の一般小学校で使われる教科書を朝鮮語に翻訳したもの」だと説明する。 朝鮮族学校とはいえ、朝鮮半島の歴史や地理を学ぶ機会は多くない。ルーツが朝鮮半島にある子どもたちが「朝鮮に対する正しい視点」を持てる条件が整っていないのが現実だ。 「このような問題について、仕方ないと考える同胞もいるが、私は子どもに朝鮮民族としての意識をしっかり持ってほしい。ほかの2世公民も同じ心情だと思う」と崔副局長はいう。 基本は「家庭内教育」
公民2世のこのような思いは彼らの成長過程に根づいたものだ。 「幼い頃、家には労働新聞や朝鮮の雑誌などがあった。朝鮮映画もたくさん観た」と沈さんは話す。両親の姿から直に祖国を感じることができたし、自然と「祖国について知りたい」という感情を持つようになったという。彼女は、2000年に初めて祖国を訪問したときの感動を今でも忘れることができないという。 2世らは、子どもが法制上、中国国籍を持つことになっても祖国とともに生きる自分たちの姿を引き継いでくれることを願っている。 そんな彼らが出した結論は「家庭内教育の重視」だ。 「子どもには幼いときから、朝鮮民族は昔から勤勉で清潔を好む民族だと話して聞かせた。中国で暮らしても自分のルーツを知り、民族を誇りに思うように教育した」(崔副局長) 2世らは子どもたちに世界地図を広げ朝鮮の位置を教え、1世が故郷を離れ中国に移り住んだ経緯を話したという。 沈さんは数年前、朝鮮江原道の松涛園海水浴場で毎年行われる国際少年団キャンプに息子を送った。対象年齢は16歳までだが、当時沈さんの息子は17歳だった。 「対象年齢をすぎていたが、なんとかお願いした。息子に『母親の祖国』を見せてあげたかった。たとえ中国国籍でも朝鮮の血が流れていることは事実だから」 〈瀋陽 在中同胞コミュニティ -上-〉 在中総連結成、公民が一つに [朝鮮新報 2008.2.6] |