〈羅先紀行 朝鮮経済復興の鼓動 -中-〉 「特区」開発、制裁緩和見据える |
「インフラ整備の意義大きい」 【平壌発=李相英記者】平壌発豆満江行きの特別列車。車窓越しに真っ青な朝鮮東海が広がる。羅津駅が近づくにつれて、海岸線にはクレーンや倉庫など港の施設が姿を現す。埠頭には数隻の船舶が停泊している。朝鮮東北部の貿易港・羅津港は1990年代前半に創設された羅先経済貿易地帯における開発の主要対象だった。着工した羅津−ハッサン区間鉄道および羅津港の現代化事業をきっかけに、ふたたび脚光を浴びつつある羅先経済貿易地帯。決して十分とはいえない環境の中でも、将来を見据えて懸命に開発に取り組む姿が垣間見えた。 足踏み状態
1991年12月、羅津市と先鋒郡に自由経済貿易地帯を設置する政務院(当時)決定が採択され、100%外国資本の進出が許可された朝鮮で初の経済特区となる羅津−先鋒自由経済貿易地帯の創設が内外に発表された。 93年1月、自由経済貿易地帯法が制定され、99年2月には、羅津−先鋒経済貿易地帯法に改正された。 2000年9月、行政区域名が羅津−先鋒市から羅先市に改称された後も経済貿易地帯の開発は続いている。 羅津駅到着後、バスに乗り、ホテルへ向かう。車の窓越しに映る羅先市の街並みは一般的な地方都市とは違った趣きだ。道路の舗装や建物の外装も比較的しっかりとなされている。「外国人船員倶楽部」という看板が朝鮮語、英語、ロシア語で掲げられた建物も見える。外国人船員や貿易関係者の社交用施設だという。 着工式に参加する関係者一行が宿泊した東明山ホテル、南山ホテルは国営の国際ホテルで、これ以外にも、市内では外国資本のホテルが数軒営業している。 羅先市人民委員会のキム・スヨル委員長によると、市内の750q2あまりの敷地に広がる経済貿易地帯では現在、約200の企業が経済活動を展開している。中国や香港、タイ、ロシアなどの企業が大半を占めているという。 「創設当初の目標には、はるかに及ばない」 金委員長は具体的な数字は明かさなかったが、開発が足踏み状態にあることを素直に認めた。「ハイテク企業や加工業の進出が望ましいが、さまざまな要因が重なって現状では投資規模も内容も満足なものとは言えない」という。金委員長の表現を借りれば、「ポタリ商売(行商)」レベルの小規模な活動も多い。 懸案の解決 羅先経済貿易地帯創設の元となった豆満江開発計画は、同地域を東北アジア諸国の貨物輸送と中継貿易および加工工業発展の拠点として築き、地域内の経済協力、交流を活性化させ周辺諸国に大きな経済的実利をもたらそうというものだった。羅先地域が脚光を浴びたのは、陸海連絡輸送の要衝地として開発に有利な自然地理的条件を備えていたからだ。 関係者らは開発が足踏みになっている理由について、90年代後半の「苦難の行軍」による経済全般の停滞、西側諸国の制裁などいくつかの要因を挙げる。なかでもインフラ整備は地帯開発の最大の懸案だった。労働力、サービス条件、法制定などのソフト面に比べて、鉄道、港湾などのハード面の環境整備が十分ではなかったという。 だからこそ、今回着工した鉄道と港湾の現代化事業にかける羅先市側の期待は大きい。とりわけ、貿易港としての機能拡張に直結するコンテナ貨物専用埠頭の建設に関係者の注目が集まった。 着工式前日の10月3日、駐朝外交団と海外メディア特派員らを対象に、羅津港に対する視察団が組まれた。一行を乗せたバスは港を一周し、ロシアとの共同開発予定地である第3埠頭では同港関係者による説明会が行われた。 現在、同港でもっとも取扱量が多い貨物は東南アジアからのものだという。港に所狭しと並ぶコンテナは中国企業のものが多い。羅津−釜山間のコンテナ定期航路も稼働中だ。以前は日本籍船舶の出入りもあった。ペ・ホンチョル羅津港長は、「アジアと欧州を結ぶ輸送ルートの整備によって羅先に対する注目度は間違いなく高まる」と断言する。 「鉄道と海路の組み合わせで輸送日数の大幅な短縮とコストダウンが実現できる。2国間貿易、輸送中継地としての開発の展望も開けてくる」と金委員長も期待を寄せる。「インフラの整備が今後、より多くの企業の進出につながってほしい」と話した。 米国による経済制裁の解除をはじめ、朝鮮の対外経済活動を縛ってきた規制は緩和されつつある。このような流れが今後も進めば、今回のインフラ整備とも相まって、羅先の開発にふたたび拍車がかかるというのが関係者らの一致した見解だった。 金委員長は、対外経済分野の強化が叫ばれる中で、朝鮮初の経済特区が果たすべき役割は大きいと強調する。羅先地域が持つ潜在力は、すでにさまざまな議論を通じて証明済みだ。解決すべき課題は多いが、今回の朝ロ共同事業のような新たな動きを市全体が後押ししていきたいと語った。 〈羅先紀行 朝鮮経済復興の鼓動 -上-〉 朝ロの結びつき緊密に [朝鮮新報 2008.11.14] |